DX潮流で問われる、これからの企業リテラシー

DX潮流で問われる、これからの企業リテラシー〜時代の鍵は、AIへの意識改革〜

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マネジメント層の意識改革がDXの鍵

松尾

 日本企業がDX推進を成功させるためには、企業の経営層(マネジメント層)が、ネット・デジタルネイティブの企業(以下、ネット系企業)の感覚やマインドになることが大前提と考えています。

 例えば、ネット系企業出身者が、製造業などの企業の経営層に入れば、文化が醸成されて、変わっていくと思うんですよね。

 DX推進においてとにかく重要なのは、「仮説思考でやってみて、更新していく」というサイクルを回すことなんです。

 それと合わせて、ネット系企業のマインドになっていくことで、そこから先の「データの世界」に繋がりやすくなると思います。

 AIを使い易くなるというか、むしろ使うことが自然になっていくでしょうね。

野口

 企業の経営層は、ネット系のカルチャーや思考はもちろん、今後はAIの知識に加え、AIを社会実証する上でのスタンスやマインドの変容にも対応していく。いわゆる「AI-Ready」な状態になる必要があるということですね。

 現在の状況を踏まえると、若い世代から、AIネイティブ世代やAIネイティブキッズがうまれてくることに期待してしまいますが……。

松尾

 AI的な視点で見ると、経営においても、捉え方が変わることが多いと思うんです。社会学、心理学や法律の考え方にも影響を及ぼすかもしれません。

野口

 今後は、DX格差だけでなく、AI教育による格差も広がっていきますよね。AIわからない世代が取り残されていって、何も残せずに肩身が狭くなっていく未来が想像できます。

松尾

 日本企業の問題は、何も起こらない無風状態に原因があると思っています。無風の中で、業績だけが徐々に落ちていく。

 多くの企業がDXをやっているふりをしていますが、責任逃れからか、結局は何事も起こらず、全く変わっていないという最悪の事態が散見されています。

 そういった、じりじりとやっていく手法ではなく、ビジネス自体が大きく変わることを見据え、しっかり目標を定めた「攻めのDX」を行うこと。それが大切だと考えています。

野口

 なるほど。その無風状態に変化を起こす人材を、企業内やビジネス界で生み出すべきで。そして、そのために経営層もAIに対する理解を深める必要がある、ということですかね。

松尾

 そうですね。例えば、会計や財務的な知識についても、昔はさほど重要ではなかったかもしれませんが、現在では当たり前にもっておくべき知識ですよね。

 それと同じように、ITはもちろん、AIの知識も、既に必須になってきているのです。

野口

「国算社理AI」と言えるくらい、AIは必要な基礎知識ですね!

 企業の体幹を強くするには、やはり内部の人材が、DXやAIに対して、自ら意志を持たなければいけないと思っています。

 もし、無風状態に風穴を開けられるような、ビジネス推進力の高い人がAIネイティブ化していけば、社内もざわざわして、DXの風も起こるかもしれませんしね。

 そういった意味で、今後のビジネスAI人材の育成が非常に重要になっていくと、切に感じます。

DX推進のコツは、プロセスよりもゴール重視

野口

「攻めのDX」の鍵は、経営層の意識改革や、AI人材育成であるということがよくわかりました。

 ただ、必要性を理解をしたとしても、すぐに取り掛かれず、初期段階で躓いてしまう企業も多いと思いますので、最初の一歩を踏み出すためのコツなどがあれば、教えてください。

松尾

 究極を言えば、目標をとことんシンプルに設定し、そこに集中することです。

 DXを進めていく過程は色々とあるのですが、すべてを自動化すれば人の手を介さなくなるので、自社の中でも、バリューチェーンとしても、最終的にすべてが速くなりますよね。

 例えば、ライブコマースやECのリードタイムを短くすることで、顧客は商品をすぐ手に入れることができる。そして、今までできなかったことが、速くできるようになるわけじゃないですか。

 その「速さ」こそが価値になると思うんです。企業側は、その価値としての速さをどうしていくか、そこから先、何に繋がっていくかを目標として見るべきだと考えています。

野口

 あるべき未来を、できる限りシンプルに表現できれば、もしそれが仮に抽象度の高いものであっても、現実とのギャップは見える気がします。

 更に、そのギャップをステップ化して、どの技術でどう解決できるかを知ることが大事ですよね?

松尾

 目標に、プロセスは関係ないじゃないですか。こんな時代なので、プロセスはどんどん変わっていきますよね。

 だからそのような固定観念や既成概念はさておき、ゴールのみに集中することが大事だと思います。

「ものごとを本質的に捉えて、抽象化する」

 それを可能とするのがAIであり、ディープラーニングなのではないでしょうか。

松尾 豊 教授
東京大学大学院 工学系研究科・教授 松尾 豊(まつお ゆたか)

1997年 東京大学工学部電子情報工学科卒業。2002年 同大学院博士課程修了。博士(工学)。産業技術総合研究所研究員、スタンフォード大学客員研究員を経て、2007年より、東京大学大学院工学系研究科准教授、2014年より特任准教授。専門分野は、人工知能、ウェブマイニング、深層学習。2014年から2018年まで人工知能学会 倫理委員長。2017年より日本ディープラーニング協会理事長。

野口竜司氏
株式会社ZOZOテクノロジーズ
VP of AI driven business
野口 竜司(のぐち りゅうじ)

「文系AI人材」として様々なAIプロジェクトを推進。AIビジネス推進や企業のAIネイティブ化に力を入れる。大学在学中に京都発ITベンチャーに参画し子会社社長や取締役として、レコメンド・ビッグデータ・AI・海外コマースなどの分野で新規事業を立ち上げる。その後、ZOZOグループにジョイン。副業で大手企業やスタートアップ向けのAI研修やAI顧問も提供。著書に「文系AI人材になる」など。

取材・文:寺西 藍子(indigo,Inc)

写真:小西 泰央(Wembley MediaArts LLC)