【人材育成 for DX】開催レポート #0 特別版「DXのためのデジタル人材育成講座」

ゲスト:株式会社ベイカレント・コンサルティング 小峰 弘雅 氏

JDLA が開催する無料ウェビナー「人材育成 for DX」。このセミナーではDX推進の鍵となる「デジタル人材育成」に関して、毎回企業ゲストをお招きしながら様々な取り組みをご紹介しています。

今回は9月29日(水)に特別版として、特別講師 JDLA人材育成委員メンバーの野口 竜司氏による講座形式で開催しました。また、ゲストに株式会社ベイカレント・コンサルティングにてさまざまな業界のDX支援を行い、社内の人材育成やAIプロジェクトも担当している小峰 弘雅氏を迎え、野口氏との対談で大変興味深い話を伺いました。 

登壇者紹介

JDLA人材育成委員メンバー / 株式会社ZOZOテクノロジーズ VP of AI driven business

野口 竜司 氏

ZホールディングスグループのZOZOで多様なAIプロジェクトを推進し、AI人材育成にも力を入れている。「文系AI人材になる」(東洋経済新報社)の著者でもあり、「ビジネスパーソンの総AI人材化」を目指し活動中。

株式会社ベイカレント・コンサルティング デジタル・イノベーション・ラボ チーフデータサイエンティスト

小峰 弘雅 氏

製造、通信、金融、公共業界において、AIを活用した新規事業の立ち上げやオペレーション改革などのテーマに従事している。著書に『戦略論とDXの交点』(共著/東洋経済新報社)。ベイカレントのAI人材開発も担当。G検定/E資格も取得。

デジタルを“使う”人材の育成が鍵

はじめに野口氏と小峰氏より自己紹介がありました。小峰氏は2019年にG検定、2021年にE資格に合格されているとのことです。E資格は特に難しい試験とのことで、小峰氏がこの分野の第一線でいらっしゃることが伺えます。

そして、野口氏より「DXのためのデジタル人材育成」をテーマに特別講座がスタートです。

 「さまざまな業界でDX活用が進んでいますが、人材がいない、どうしていいかわからないという、企業が多いという課題が出てきています。詳しい人が一部いても、格差(情報差)があることでコミュニケーションが取りづらい場合もあり、リテラシー整備の必要性が顕著になってきています。」

「このことから、DXを進めるためのAIをはじめとしたデジタルの技術を作る人材の育成はもちろんのこと、デジタルを“使う”人材の育成が非常に重要な鍵となってきます。

デジタルを“使う”人材として身につけるべき能力とは、自身の関わるビジネスへの理解はもちろんのこと、それを踏まえながらデジタル領域の全体を掴み、各ツールも使ってみながら理解することだと思います。」

「JDLAでは“ビジネスパーソンはAIのこと、DXのことを全員知るべきである”というスタンスをとっており、より多くの方に気軽にAIを学んでいただきたいという思いから、無料でAI for Everyoneという講座をご提供しています。すでに開始1ヶ月で1万人を突破しており、非常に中身の充実したコンテンツとなっておりますので、ぜひ興味を持たれた方は受講していただければと思います。そしてさらに深く知りたいという方は、G検定、E資格と進んで行かれることとよいでしょう。」

“AIはDXのコアテクノロジー”みんながAIを学ぶべき時代へ

「大きな変革を目指す場合、新しいサービスや大きな業務改善を実施する際にAIを抜きにして発案すると、グローバル競走において不利な状況に必然的に陥ってしまうという状況から、我々は、AIはDXのコアテクノロジーであると位置付けています。」

「一方で、人材の不足は深刻です。とくにAIを理解し、DXを総合的に推進できる人材が不足していて、大きなボトルネックになっていると感じます。AIというのは理系の専門家だけのものではなく、全体を理解し、ビジネスリターンを踏まえた推進者が重要になってくると思います。そのためにも、DXを推進するためにまずPythonを学ぼうとするのではなく、AIを使って信頼していく方が重要です。」

「私は、AI学習は“心技体+知”であると説明していて、まず総合的に学んで、マインドと実践力をつけていくことを推奨しています。また、共通言語として広くナレッジを浸透しておかないと知識格差で議論が進まないという弊害も起き得ます。そして事例も重要ですが、情報はすぐ古くなるのでできるだけ最新のAI事例をインプットしておくことが重要です。これらを意識することで、よい発案ができ、AIの目利きもできる、バランスのいい“心技体+知”を身につけられるでしょう。」

「ここまで個人レベルでの学習についてご説明してきましたが、企業レベルでも状況が整っていないとなかなかDXが進まないのが現状です。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のレポートによりますと、人材不足という状況は理解しつつも、人材要件、育成方針や処遇が整っていないという現状が指摘されています。企業側もAIに対するリテラシーをあげていくことが必要不可欠です。内部の人材を育成することも手段としてありますが、その方針の整備もまだ多くの課題を抱えているのが現状です。」

ここから小峰氏と野口氏によるディスカッションに移ります。

デジタル変革はDIとDXに分けて考える必要がある

小峰氏「通常、Dのデジタルの部分にフォーカスされがちですが、私はXのトランスフォーメーションの方が主体で、本質はビジネスモデルの変革だと解釈しています。この変革は2つのモードに分けて考えるとよくて、一つはDI(デジタルインテグレーション)で、ビジネスモデルにおける要素のいずれかをデジタルによって高度化するもの、ビジネスをあまり変えない場合です。一方、デジタルを使って、市場、戦い方そのものを変えるビジネス転換のことを我々はDXと考えています。DX人材を語る上でこの整理は重要で、これにより人材の要件が変わってくるのではと考えているからです。」

野口氏「まさに、高度化なのか、転換なのかというところですね。」

小峰氏「たとえば、ダイキン工業はDXに取り組んでいらっしゃいます。もともと空調設備を販売していましたが、発想を転換して「快適な空気を提供している」と、概念から転換しました。マネタイズもサブスクリプションモデルへと移行しており、まさにビジネスを転換された事例といっていいですね。前回の#1でも話題に出ていましたが、人材という経営資源にも着目していてダイキン大学を作ったりと、外から見えない部分でもデジタル転換をされています。

DIではサイバーエージェントの好例があります。リアルCG技術にAI技術を組み合わせ、架空モデルを生成することで、クリエイティブプロセスを簡略化するという仕組みです。コロナ禍にリアルでの撮影が難しい状況を、デジタルを使って高度化できた事例です。」

ビジネスモデルとDX戦略の相関関係

野口氏「DX戦略はビジネスモデル毎でも変わってくるのでしょうか?」

小峰氏「まさに、ビジネスモデル毎にやるべきことは違うと思います。デジタル施策をやっているれどインパクトの出ないケースがあれば、ビジネスモデルが労働集約型なのに資本集約のための施策を実施している場合もあり、企業によって強い利益方程式が決まっているにもかかわらず、そこに反した施策をしてしまうとうまくいきにくいです。」

野口氏「各ビジネスモデルや自社の収益構造を理解して、どういうフレームワークに当てはめるか、どこにDXの種を蒔いていくかを冷静に考えることが重要ですね。」

DX人材が身につけるべきスキルとは

小峰氏「人員体制の話ですが、私はDX人材にも種類があると思っていまして、ビジネス部門と伴走型で課題の解決をするユースケースリーダー(一般的にはデジタルトランステーター、ビジネストランスレーターなどと呼ばれる)、データサイエンティストそしてIT側のデータエンジニアの3種類に分類して考えています。ユースケースリーダーは、AIの施策ひとつひとつをケースというふうに捉えて、その施策に対して責任をもつ施策リーダーです。」

小峰氏「DX人材が身につけるべきスキルセットをチャートにしています。分析力は、統計や機械学習なのでG検定やデータサイエンティスト検定を勉強する対応でよいと思います。重要なのは発見力と実装力です。発見力はDIとDXを分けて考えます。DIの場合はオペレーションの中で解決すべき課題は何かを発見する力、DXは新規事業としてビジネスチャンスはどこにあるのか?という発見する力です。そして意外と忘れられがちなのが、実装力で、システム自体もウォーターフォールではなくアジャイルがメインになるので、その辺りを意識することが必要となります。あくまで、これはチームでの想定ですので、1人ですべて身につけるべきというわけではなく、それぞれ役割分担ができるといいのだと思います。」

DXに向けた人材育成の実践事例

小峰氏「我々のクライアントさんでは、人材育成を目的別に採用と育成と活躍の3つのフェーズに分けて考えます。

“DX人材の型化”に対して、とても面白い施策だと思うのがDXスターのブランディングです。製薬会社の事例では、社内のDXスターをピックアップして社外に打ち出すことをしています。魅力的な人材がその会社にいるというアピールになりDX人材の採用につながる事例がありました。

“DXムードを醸成”するために、セミナーや研修を集中的に実施することで、会社の本気度を示すことにつながります。ここで特徴的なのが、選抜プログラムで研修をやる傍ら、裏目的はいい人材の発掘をすることです。有名な事例でいうと、ワークマン社も同様の手法をとっており、課長部長レベルで分析研修を実施して優秀な人たちを選抜することで、ムードの醸成につなげて今す。

 “DXの自分事化”では、ハッカソンやアイディアソンを通して、自ら考える力を長期的に身につけさせることで将来的に活躍できるよう育成する方法もあります。

最後に“DXの魅力化”ですが、そもそも企業というのは魅力的でないと入社したいと思われないので、どんな未来を目指しているかを示すことは重要です。そのために次世代の幹部やエースによい近未来を描いてもらうワークショップの実施を発信することで採用に役立つ事例もあります。

野口氏「なるほど。私はこの中ではとくにDXスターの施策は好きですね。そういう人が目立ってくると変わって来ますね。

この分析は、とても企業内実態の実情を熟知した上での施策だと感じました。研修プログラムをやっておしまいなのではなく、どう感じてどう動くかを理解した上で作成した一覧だなと思います。ぜひリスナーの方も参考にしていただければと思います。」

ベイカレント社が実際に行っているカリキュラム

小峰氏「実際にベイカレント内では、これらのスキルに則ってさらに分解してカリキュラムを組んでいて、手法や座学からはじめ、自分で分析して提案・プレゼン、フィードバックを繰り返すことで、経験蓄積サイクルとスキル強化サイクルの両面から育成しています。入社時からそのようなことを繰り返すようにしているので、DXは企業の変革であることが身につきます。」

ここで、小峰氏と野口氏によるディスカッションは終了し、参加者から寄せられた質問に小峰氏よりご回答いただきました。

Q:育成方針の前に事業戦略の中にどうDXやAI活動を位置付けていくのでしょうか?その段階から課題意識があります。経営者の資質の問題で終わらずに現場やミドルから事業戦略にDXを組み込んでいくために何ができるでしょうか?

A:経営者に意識がないとなかなか難しいですね。地道な取り組みになるかもしれませんが、例えば経営者を外のツアーに連れていくということをやっていたりします。とにかく、異業種を訪問したり、以前ヨーロッパのツアーに一緒にいくこともありました。そこから徐々に危機感が高まることを期待します。

Q:食品メーカー工場のDXに非常に関心があります。しかし、メーカー側からのDX事例の外部露出が極めて少ないとベンダーさんから聞いています。食品業界で起こっているDXやAI活用があれば、できることやよくある話を聞いてみたいです。

A:食品業界のDXAI活用でよくあるのは2つで、検品か需要予測です。食品業界も需要予測して最適化することでAIを活用できると思います。フードロスとも繋がって社会課題ともマッチするのでそこは必ずやってほしいところです。

クロージングによせて、野口氏よりあらためてJDLAについて、人材育成事業についての説明がありました。今回のようなセミナーは毎月実施予定です。そして、11月6日にはG検定が実施されます。受験受付中ですのでぜひDX人材育成のきっかけにご活用ください。

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