【人材育成 for DX】開催レポート #6「ベネッセが進めるデジタル人材育成戦略 〜Udemyの有効活用法教えます!〜」

ゲスト:株式会社ベネッセコーポレーション 北村 洋子氏、古島 和弥氏

JDLAでは、デジタル人材育成に積極的に取り組む企業から学ぶ、無料ウェビナー「人材育成 for DX」を開催しています。このセミナーでは、DX推進の鍵となるデジタル人材育成に関して、毎回企業ゲストをお招きしながら様々な実際の取り組みをご紹介。そのノウハウを紐解き、お伝えします。

2022年6月1日(水)に開催した「人材育成 for DX #6」のゲストは、株式会社ベネッセコーポレーションの北村 洋子(きたむら ようこ)さん、古島 和弥(ふるしま かずや)さん。「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」など教育分野で知られている同社は現在、DXをテーマに社内改革を推進し、デジタル人材の育成にも注力しています。多岐にわたる取り組みの中でも、特徴はオンライン学習プラットフォーム「Udemy」の活用です。お二人には、ベネッセのデジタル人材育成の取り組みの内容や背景、また、Udemyの有効な使い方について伺いました。

登壇者紹介

株式会社ベネッセコーポレーション 人財開発部

北村 洋子(きたむらようこ)氏

2008年に新卒で大手金融機関へ入社後、教育事業の持つ可能性の大きさに心揺さぶられ、2011年にベネッセコーポレーションに中途入社。個人向けの商品企画・開発に携わり、2017年から人財開発部で採用を担う。現在は、新卒採用領域の統括を担当。

株式会社ベネッセコーポレーション 社会人教育事業部 Udemy Business マーケティング責任者

古島 和弥(ふるしま かずや)氏

新卒でベネッセ入社後、BtoBサービスの営業・企画・マーケティングに従事。現在は国内650社以上で採用されている法人向けオンライン学習動画サービス「Udemy Business」のマーケティング責任者を担当。厳選された7300講座を年間いつでも受講できる定額制受け放題プランを提供し、企業の人材育成を支援している。

JDLA 理事/事務局長

岡田 隆太朗(おかだ りゅうたろう) [モデレーター]

2017年、ディープラーニングの産業活用促進を目的に⼀般社団法人日本ディープラーニング協会を設立し、事務局長に就任。2018年より同理事兼任。緊急時の災害支援を実⾏する、⼀般社団法人災害時緊急支援プラットフォームを設立し、事務局長として就任。コミュニティ・オーガナイザーとして、数々の場作りを展開。

基礎的な知識と日常の業務が有機的につながる

まず、JDLAの岡田から本セミナーシリーズの趣旨説明とデジタル人材育成が急務であるという現状の共有のほか、DX時代のすべてのビジネスパーソンが持つべき共通リテラシー領域「Di-Lite」についてご説明。その後、北村さん、古島さんによるプレゼンテーション「ベネッセが進めるデジタル人材育成戦略 〜Udemyの有効活用法教えます!〜」がスタートしました。

最初に、人財開発部の北村さんからは、ベネッセのデジタル人材育成の取り組みの内容や背景についてご紹介いただきました。

――北村

ベネッセコーポレーションでは、経営直轄にグループ横断DX部門(DIP:デジタルイノベーションパートナーズ)を立ち上げて、グループの各事業におけるDXを推進しています。機能としては、戦略立案とモニタリングをする「DX戦略とガバナンス」、社内の各部門やグループ会社に専門人材を派遣し、具体的な課題を把握して解決していく「DXコンサルティング」、現場の取り組みを評価して課題抽出・一元管理し、共通的な対応をリードする「DX人材開発・採用」、「システム開発・運用」を行っています。

重点実行施策FI2021・2022では、「事業フェイズに合わせたDX推進」と「組織のDX能力向上」の2つのテーマを設定し、相互にスパイラルアップしていくように取り組むことでDXを加速させています。その中でも特に大きなテーマは「DX人財の開発」です。

――北村

組織のDX能力向上については5つの視点で設定しています。まずは、「職種定義」です。改めて社内で必要な業務や職種を整理し、「DX人財7職種(企画、BPR、PMO、開発管理、エンジニア、デジタルマーケ、データ)」を定義しました。

2つ目が職種ごとにスキルマップを作成し、求められるスキルのレベルを可視化「スキルマップ」。3つ目は、客観性担保と市場価値判定を意識し、スキル診断サービスなどを活用する「アセスメント」。4つ目はタレントマネジメントシステムで管理し、アサイン・育成・採用に活用する「管理」。5つ目の「研修プログラム」は、自社事例を活用したオリジナルプログラムと、一般知識はUdemyの活用という両軸で進めています。

5つ目の「研修プログラム」の“両軸”について、掘り下げてご説明します。当社のDX研修体系は、フェイズと項目を分けています。まずは社員一人ひとりの基礎的なデジタル知識や能力を上げるべく、今の自分の現在地を把握するテストを受けてもらったうえで、基礎研修を受けてもらいます。

次の段階の専門知識スキル研修は、入門編・実践編に分けています。入門編は、企画、デジタルマーケ、データ、開発管理、エンジニアなどの領域ごとに「絶対必要だ」という知識を設定。そして、実践編では、現場で本当に使えるDX能力を獲得してもらうために、実際の現場での業務内容を細分化して、実際の手法やツールと連動させた研修プログラムも作成しています。さらに、全社員・全職種に共通したスキルやレベル別にレコメンドされるUdemyを活用しながら自学自習も進めています。

では、実際の研修内容もご紹介します。デジタル基礎研修では、業務上必要となるデジタル知識や世の中のデジタルサービスの動向、グループ内のDX事例を学びます。企画職向けでは、アジャイル開発・ウォーターフォール開発のプロセスポイントを学び、当社の開発事例から理解を深めます。データ職向けでは、データ利活用の基礎知識の習得、事業で利用しているデータを使った分析の事例から学びます。デジタルマーケティング職向けでは、マーケティング概論、デジタルマーケの基礎知識や、当社におけるサイト・広告運用の事例を提供しています。

どの研修でも共通しているのは、「ここは知っておかないと困る」という絶対に必要な知識と、「社内では実際にこうやっている」という社内事例とのコンビネーションで行っている点です。基礎的な知識と、「今日・明日の自分の業務でどう活かせるか」が有機的につながるところがポイントです。

今年度から“リスキル休暇”を導入

――北村

ベネッセのDX人材育成は、「一人ひとりの主体的な“チェンジ”」をポリシーに進めています。「やりなさい」「今からどうぞ」ではなくて、学ぶ機会の提供とバックアップをすることで、自分自身で学んでいく自己研鑽を加速させています。座学で習っておしまいではなく、仕事の中で力をつけ経験を積む専門力を高めリスキルしていくことがポイントです。また、主体的な学習支援として、今年度からはリスキル休暇を施行。この制度では、学習を目的とした休暇を3日間付与し、リスキリングのために会社のPC端末や研修システムを利用できます。

ここで、リスキル社員体験談をご紹介します。

――北村

2017年に入社した山本さんは、最初は法人営業の担当でした。「見積もりの作成に時間がかかり追いつかない」という悩みをから、業務効率化のためにExcelのマクロを勉強してみようとUdemyをスタート。「RPGゲームのレベル上げのように自分自身がスキルアップしていくのが面白い」と、実務にもどんどん活用。他のプログラミング言語やローコード・ノーコード系のツールの理解が進み、他の応用としても活用できているという事例です。

「DX銘柄2021」選定企業の半数が導入しているUdemy Business

続いて、Udemy Business マーケティング責任者の古島さんから、ベネッセコーポレーションが提供するUdemyの活用のポイントを紹介いただきました。

――古島

Udemyはアメリカで創設されたUdemy社が提供する、全世界で5200万人以上のユーザーがいる世界最大級の学習プラットフォームです。個人が自身の専門分野の講座をUdemy上にアップロードし、それをまた個人の方が買って学ぶことができるCtoCのサービスです。法人向けのUdemy Businessは、受講者から高評価を得た厳選された約7300本の講座を好きなだけ学べるサブスクリプションサービスです。学習管理の機能や、API連携やSSO設定にも対応しています。

――古島

Udemyは、エンジニア、起業家、大学講師など各界の実務講師が現場実務で培ったノウハウを講座化。実務で役立つ内容が中心であることが特徴です。2019年から展開し今年で4年目となるUdemy Businessは、国内650社以上、日経225の2社に1社が採択。「DX銘柄2021」の選出企業のうち半数以上の企業にご利用いただいています。導入理由は、「社内のDX推進のため、基礎知識のレベル上げていきたい」という理由が最も多いです。

リスキリングがうまくいく企業の共通点は、学ぶきっかけと文化づくり

――古島

一方で、会社が受講費を負担するだけで、動機付けが弱いと利用が低迷するというケースは、導入企業様からご相談いただく点であり、当社自身もUdemyを使用するうえで感じている課題でもあります。今日は、実際に導入企業様がどのような工夫をされているのか、事例をご紹介します。

――古島

例えば富士通様では「IT企業からDX企業への転換」をパーパスに掲げ、ドラスティックな人事制度改革も行っており、その一つの取り組みとしてUdemyを導入いただきました。1on1制度を導入し、上司が選択式研修の受講履歴をもとにキャリアをアドバイスするという取り組みをされています。これは、「勉強しなさい」というプレッシャーをかけるのではなく、「こういうトピックを学んでいるということは、将来的にはこういうキャリアに興味があるのですか」と、キャリア面談に活用するという使い方をされています。全社戦略と社内の学びを促す文化作りを組み合わせることによって、結果的にUdemyの活用の頻度が高くなっているという例です。

学び直し・リスキリングがうまくいく企業様の共通点は、闇雲にDXに取り組むのではなく、自社の強みを活かした明確な勝ち筋を持たれている企業様が多いです。また、キャリアパスと対応した自律的学習がしやすい設計に工夫されています。この経営戦略と人材開発の間をつなぐ部分として重要なのは、社員の意識改革への気配りです。学ぶ“きっかけと文化”づくりに心血を注がれていることが成功のポイントであると感じています。

続いて、質疑応答の模様をレポートします。

座談会・質疑応答

プレゼンテーション終了後、モデレーターの岡田と座談をしながら、参加者からの質問にお答えいただきました。個別の質問とともに、参加者から特に気になるテーマを投票していただくスタイルで進行しました。

――まず、人材育成を始めるにあたり「DX人財7職種」を定義されたというのは、今まで聞いたことがない入り方でした。これはどのように決めていったのですか。

――北村

ここ最近のDXと言われる前からベネッセでは、教育サービスのデジタル提供について「どうやったら担い手としてレベルアップできるのか」と議論してきました。スキル定義やその可視化についても昔から模索してきたところでもあり、「まずは物差しが必要」というのが実感値としてありました。職種別にしたのは、ベネッセコーポレーションは別会社かというぐらい様々な事業部と仕事内容があるので、社員としても「感覚的に一種類では絶対にない」と思っていました。

――参加者からは「内製と外注の比率はどれぐらいですか」という質問も寄せられていますが、いかがですか。

――北村

一般的に共通している基礎知識など、一部は研修会社さんに委託させていただいています。ベネッセ特有の実践の話と、基礎的に必要な話は切り分けて、外部にお願いしやすいところは外部の力を借りながら、どちらも混ぜこぜでやるのがポイントですね。

――全社員必要なレベルとは、どのように定義しているのですか。

――北村

世の中の一般的なアセスメントに照らし合わせて「何レベルです」とやっても意味がありません。「ベネッセでサービス開発をするには」「ベネッセでデジタル企画をするには」と、アセスメントもオリジナルでカスタムしています。基礎レベルがテストによって違うということが起きないように、よりどころになるレベルの幹を作ることが大事ですね。

――人材育成の進捗状況や成果についてはいかがですか。

――北村

Udemy Businessのアカウントは全社員に付与し、多くの社員が取り組んでいます。しかし、実際問題、「すごくやっている人」もいれば「少しだけの人」ももちろんいます。なかなか取り組めていない社員の話を聞くと、やはり現業に追われて時間がない。そこで「休暇として休んで取り組みましょう」とリスキル休暇の施策につながっていきました。そういった後ろ盾も必要ですよね。

――「Udemyをどうすればもっと進められるのか」というご相談も寄せられると思いますがいかがですか。

――古島

ここは、何も問題なく進む会社は正直ほとんどないので、工夫されている企業様が多いですね。「好きにどうぞ」と投げかけるのか、「まずはこれから」とおすすめを提示するのか2パターンあります。例えば、既存の研修制度と組み合わせ、新人研修の中で「事前課題としてこのUdemyのこの講座を見て来てください」と呼びかけるなど、ある程度「まずはこれから」とご案内いただいた方が、最終的に学習される率が高くなる傾向があります。

――Udemyの人気講座はどのような内容ですか。

――古島

Udemy社とも連携し、定期的にテクノロジースキルとパワースキル(ソフトスキル)の世界の最新の学習トレンドを発表しています。今年5月に発表した調査では、日本で急増しているのはコーチングです(前四半期と比較して830%増加)。リモートワークが続く中でコーチングが課題になっていることが要因ではないかと推察します。Udemyの導入企業様はDX文脈で採用いただきますが、実際に多くの方が学んでいるのはビジネススキルだったりする。非常に新鮮に受け止めています。

オンラインセミナー「人材育成 for DX」は今後もさまざまな企業の実践者をお招きし、月に一回のペースで継続して皆様にデジタル人材育成の事例をご紹介してまいります。

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