DXに向けて、まずは役員全員でG検定受験へ。 会社を動かす、本気のリーダーシップ。

[G検定 合格者インタビューvol.1]ディープラーニング × トップダウンからのDXへの挑戦

野村証券グループのバックオフィス部門会社である野村ビジネスサービス。同社は今年7月、JDLAが提供するG検定(ディープラーニングに関するジェネラリスト検定)を役員全員が受験し、代表取締役社長の矢野 公司(やの きみもり)さんと取締役の倉橋 和弘(くらはし かずひろ)さんが合格した。DX推進が喫緊の課題である中、経営陣が率先してディープラーニングを学ぶ意義はどこにあるのか、両氏に話を聞いた。

G検定合格者プロフィール

G検定2021#2合格

矢野 公司さん

野村ビジネスサービス株式会社 代表取締役社長

G検定2021#2合格

倉橋 和弘さん

野村ビジネスサービス株式会社 取締役

社長の大号令で役員全員が受験

――まず、G検定を知ったきっかけや、今回G検定を受験しようと思った動機を教えてください。

矢野:野村グループのIT部門のメンバーの中で、「G検定を受けて合格した」という報告がイントラネットで共有されていました。そこでG検定という試験を初めて知り、興味を持ったのがきっかけです。7月に試験があるとのことで、早速チャレンジしてみようと思いました。

倉橋:私は、5月中旬に社長による「受けるぞ」という大号令をきっかけに、一念発起して受験しました。6月に入ってすぐから勉強を始めて、勉強期間は2カ月ほどでした。

――実際に学習をされてみた感想はいかがでしたか。

矢野:白本(公式テキスト)を読んでも全然わけがわからなくて「何言ってるんだろう?」という感じでした(笑)。特に第4章の機械学習の発展系に入ると途端に難しくなって、非常に苦労しましたね。黒本(問題集)を解いたり白本を何度も読んだりするうちに、だんだんわからなかったことがわかるようになっていきました。

倉橋:人工知能のディープラーニングの勉強を通じて、危機感を覚えました。それは「世の中だけが進んでいって自分が取り残される、もしくは当社が取り残される」という危機感です。今の技術はどこまで発展していて、どこが限界なのかはしっかり把握しておくべきで、日々進化していくので常にウォッチしていかなければいけないなと感じています。

――具体的な勉強方法は。また、勉強時間はどのように確保していましたか。

矢野:テキスト以外の勉強方法でいうと、社内で開催している勉強会に参加していました。その勉強会は、野村ホールディングスのIT部門の責任者が講師になり、毎週2回オンラインで行われました。また、野村グループ独自にG検定アプリを作っているんです。そのアプリを使い、往復3時間ほどかかる通勤電車の中で問題集を解いていました。土日は、午前中で勉強するようにしていて、運動やリフレッシュをはさみつつ夕方にちょこっとテストをするといった感じですかね。土日は合計6時間~8時間ぐらい勉強していたと思います。

倉橋:私も勉強会や独自のアプリも活用しつつ、オーソドックスに問題集とテキスト、模擬試験サイトを使っていました。受験前は、平日は4時半に早起きして1時間半ほど勉強して会社に行く、という生活を送っていました。仕事から帰ってきた夜は、どうしてもお酒を飲んでしまって勉強できないもので(笑)。休日は、単身赴任中のため家事をしなくてはならないので、平日と勉強時間は同じぐらいだったと思います。トータルの勉強時間でいうと、60~80時間ほどだったと思います。

DX推進にあたり「ディープラーニングで実現可能かがわかるように」

――G検定の受験前後でご自身の変化はありましたか。また、ディープラーニングに関する業務への影響度合いはいかがでしょうか。

矢野:我々の業務は、ミドルバックのオペレーションを担当しています。創立から35年、昨今DXという言葉が浸透してきたこともあり、ビジネスモデルを変えていかないといけない時期にあります。G検定の勉強を通じて、「ディープラーニングを使えば、業務の抜本的な効率化が実現できるのではないか」といったことを感じるようになりました。社内会議でも、AIやCNNという言葉が頻繁に出るようになってきて、会社全体のカルチャーが変わるきっかけになっていると感じています。

――今の野村ビジネスサービスの事業の中で、具体的に変革を進める部分はどのようなところでしょうか。

矢野:業務量が多い口座開設と相続業務の2つの部分です。一部でAI-OCRの導入など、デジタル化は進んでいますが、DXやAIを活用し、さらなる効率化を進めようとしています。

倉橋:口座業務や相続業務に加えて、私どもはグループ全体の給与計算といった人事業務も一手に引き受けています。その際、年末調整や住民税関連などで行政とのやりとりが発生するのですが、まだまだ紙の業務が残っています。行政のデジタル化の進展をにらみながら、AI-OCRや画像認識の機能使った業務の効率化を考えています。

――デジタル人材の育成の取り組み状況については、どのような方針をとられていますか。

矢野:デジタル人材の育成には、インハウスで育成の体制を充実させることが大事だと考えています。また、専門的な技術を持った人の中途採用も計画しています。「どういう人材を欲しているのか」ということを世間に発信していくために、ホームページのリニューアルも予定しています。

倉橋:今回、人口知能やAIを勉強してよくわかったのは、これらの分野は、現在の業務の延長線上には存在せず、業務を通じて学べるものではないということです。一方で、業務を知らずして、ディープラーニングを学んだからといってすぐに業務にAIを活用することもできません。したがいまして、外部採用者に対しても、当社の業務の中身を理解させ習熟させることも重要ですから、従来型のOJTもしっかりとやっていく必要があると考えています。

今では、社員の約5人に1人が勉強会に参加

――G検定の受験の背景には、矢野社長の“大号令”があったということでした。この号令は、経営陣に対してなのか、もしくは現場の一般社員も含めた声掛けだったのでしょうか。

矢野:DXをこれから取り組んでいこうにも、経営陣が部下に対して「DXを推進しろ」と言っても本気度が伝わりません。「先ず隗より始めよ」と、経営陣の本気度を見せるべく、まずは役員で受験しようということになりました。実際に受験をしてたまたまですが合格できたことで、11月の試験を受験したいという希望者が約50人も出てきています。

倉橋:当社の社員数は約260人なので、5人に1人ぐらいの割合ですね。先日は、勉強会のキックオフがあり、昼休みに10数人ずつ集まりました。「こんなテスト対策がいいよ」「第4章でつまずいています」という情報交換や悩みを相談し合ったりしたほか、個別に勉強会を開いているグループもあります。

――G検定をサポートする社内体制はありますか。

矢野:11月から、合格者の受験料の全額補助と、教材費の一部補助という形で固定額を支払う計画をしています。これにより、今後もう少し受験希望は増えてくるような気がしています。

――大手企業では、昇給のための資格ポイントとG検定を連動する会社もあります。そういった可能性はいかがでしょうか?

矢野:昇給についてはまだ考えてはいません。ただ、「チャレンジをした」ことを評価してボーナスに何らかの形で反映するなど、エンゲージメントを上げる仕組みも考えています。

――コロナ禍で在宅勤務の時間が増え、学び直しをする人が増えています。社内でも、従業員の方々が学び直しに積極的になっているなという印象は感じますか。

矢野:非常に感じています。G検定に限らず、サステナブル研修などに積極的に参加したり、新たに資格を取得しようとしたりする社員が増加しています。「今までとは違うことをやろう」という時間が生まれたというのは、ひとつコロナ禍による良い面かもしれません。

G検定を受験することで「経営者の本気度を社員に示す」

――トップがボトルネックになりDXがなかなか進まない他社のケースも散見されます。「デジタル嫌い」という経営層もまだまだ多い中で、お二人はもともとデジタルへのリテラシーは高かったのでしょうか。

矢野:私は、ITリテラシーはさほど高くはないですが理系ということもあり、G検定の教科書をちらっと読んだとき、数字がたくさん書いてあるのを見て「得意な方かもしれないな」「簡単にできそうだな」とは思っていました。

そういう意味では、リテラシーより課題感の方が強かったのかもしれません。野村グループ全体でDXに力を入れていく方針はありましたので、当社の業務にAIを活用することで、「『野村グループ全体でDXが進んでいる』ことをステークホルダーにしっかり伝えなくていけない」という問題意識は常に持っていました。

倉橋:私は、同年代に比べれば、おそらくリテラシーはかなりある方かなと思っています。Windows95の時代から、電子掲示板でマクロの組み方を聞いてみたり、計量経済系のモデル分析でコンピューターを扱っていたりしたので、嫌いではありませんでした。

私の入社当時は、パソコンは一部のマニアのものであり、当然、インターネットもなく、会社の机の上にパソコンはありませんでした。それが90年代後半から、ITリテラシーの高い人は自分で勝手にパソコンを持ち込んで仕事をし始めたんです。その後、情報管理の問題で会社からパソコンが支給されるようになりました。人工知能も同様に、会社が規定する前に、リテラシーの高い人たちが人工知能をツールとして使い始める時代が来るんじゃないかと思っています。

――G検定の取得後、社内の反響で特徴的に見えてきていることはありますか。

矢野:G検定は「若い人や、リテラシーの高い人が受けるもの」と考えている人が多いと思うんです。そういった風潮に対して一石を投じたいという気持ちはありました。私のような「50過ぎのおっさんでも合格できた」ということをきっかけに、1人でも2人でもG検定に挑戦する人が増えていけばと思います。

――トップがG検定を受ける意義や重要性はどのような点でしょうか。

矢野:大きくビジネスモデルを転換しようとしているとき、経営者の本気度を社員はよく見ています。そこで“やらされ感”が出ているとうまくいかないんですよね。DXについても、“やらされ感”で進めるのではなく、トップ自身がまずG検定などを受験することで「経営は本気だ」ということを見せる。そして、重要な案件はハンズオンで議論に参加して「この人本当にわかっているんだな」ということを思わせないと社員はついてきません。トップダウンで会社のカルチャーを変えるためには、まずは経営者が変わらないといけないと思います。

倉橋:「率先垂範」という言葉で言ってしまうと簡単ですが、私が不合格になる可能性ももちろんあったわけです。自分が不合格になるリスクは取らずに、つまり、試験を受けずに、社員には「試験を受けろ」と掛け声だけ掛けるのではなく、「不合格のリスクを取って、敢えて挑戦した」という姿勢は、少なからず社員には伝わったと思っています。

G検定にチャレンジしたいという仲間が50人以上集まってきていますが、それは私たちから命令を受けて集まっているわけではありません。「社長と倉橋が受かるんだったら、私たちもできるはずだ」「チャレンジしよう」といって集まっているメンバーばかりです。

社員たちに「社長や倉橋がG検定って受けるんだって。どうせ落ちるよな」と思われながら、私たちが実際に合格したことで、社員たちの間で「私たちもできるはず」という輪が広がり、このようなダイナミズムに繋がっていったのではと分析しています。

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