[G検定 合格者インタビューvol.13]ディープラーニング ×キヤノンMJのデジタル人材育成
G検定を含むIT系の基礎資格6つの受験を推進し、デジタル人材育成に取り組んでいるキヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)。G検定の取得推進者でもある総務・人事本部 グループ人材開発センターの佐伯 若奈さんと高畑 広志さんに、同社が進める人材育成の方針について聞いた。また、事業でAIを活用するためにG検定を取得したエンタープライズビジネスユニットMA事業部の阪尾 紫葉さんと、社内外のデータ活用推進を担うIT本部 デジタル戦略部の高木 悠一さんにG検定を受験したきっかけや合格後感じる変化等について聞いた。
G検定合格者プロフィール
G検定2022#1合格
佐伯 若奈(さいき わかな)さん
キヤノンマーケティングジャパン株式会社 総務・人事本部 グループ人材開発センター 部長
G検定2021#3合格
高畑 広志(たかはた ひろし)さん
キヤノンマーケティングジャパン株式会社 総務・人事本部 グループ人材開発センター 人材育成課 課長代理
G検定2020#2合格
阪尾 紫葉(さかお しのぶ)さん
キヤノンマーケティングジャパン株式会社 エンタープライズビジネスユニットMA事業部 デジタルビジネス推進本部 製造SS統括部 SS第一グループ チーフ
G検定2022#1合格
高木 悠一(たかぎ ゆういち)さん
キヤノンマーケティングジャパン株式会社 IT本部 デジタル戦略部 デジタル変革推進課 課長
基礎スキルとして、IT系6資格を受験奨励
――まず、総務・人事本部の佐伯さんと高畑さんのお二人から、現在の部署や業務内容を教えてください。
佐伯:総務・人事本部 グループ人材開発センターでは、主にキヤノンMJの人材育成領域を担当しています。事業ごとに必要なスキルを定義しつつ、横断的で基礎的なスキルの人材育成体系を作成し、支援・運用しています。約3年前からは、IT系の共有スキルもしっかりと身につけて足元を固めていくべく、ITパスポート試験の受験奨励や、基礎的なDXについて学ぶeラーニングの導入を推進しています。
高畑:私は、新入社員研修や2年次研修などの一般社員向け階層別研修の統括をしています。また、社員の資格情報の管理も私たちの課で行っており、先ほどのITパスポート試験をはじめとするIT系資格取得推奨なども注力していることのひとつです。
――キヤノンMJにおける、デジタル人材育成への取り組みの概要を教えてください。
佐伯:2021年に、長期経営構想(2021-2025)を策定しました。そのうち「2025年ビジョン」では「社会・お客さまの課題をICTと人の力で解決するプロフェッショナルな企業グループ」と掲げています。“キヤノン”というと、カメラや複合機、プリンターといったキヤノン製品の国内のマーケティングのイメージがまだまだ強いかと思いますが、昨今はITソリューション事業に非常に力を入れています。持続的な成長に向けてITソリューション事業を中核とした事業ポートフォリオへと転換し、事業を通じた社会課題解決を通じて企業価値向上を図るという大きな構想があります。
デジタル人材育成については、個々の部門で事業上必要な施策を打ったり、IT部門を中心に進めたりしている状況です。中でも、今回参加している阪尾が所属するエンタープライズビジネスユニットは、かなり早いうちから先進的にデジタル人材育成に注力しています。また、高木が所属するIT本部はキヤノンMJのデジタル化を推進している部署でもあるため、特別な教育体型を組んで実施しています。
2022年1月からは、総務・人事本部で選定したIT系の基礎資格6つについて、合格時に受験料を会社が全額負担する、という取り組みを始めました。この6資格の一つにG検定が含まれています。今後はさらに上位のスキル取得に向けて、私たち人事部門とIT部門、事業部門とも協力しながらスキルアップを目指しているところです。
――G検定を含む6つのIT基礎資格の取得推進について、それらの資格を選んだ理由は?
高畑:会社は今、ITソリューション事業を中核に事業ポートフォリオを転換していくという大きな流れにあります。そのようなとき、私たち人事部門のようなお客さまに直接価値提供をしていない部門であっても、基礎的なITのスキルレベルを上げ、DXを推進して業務の最適化、生産性の向上を図り新たな施策を推進していく流れにしたいと考えていました。
そのため、どのような部門でも共通して学んで意味があり、ITスキルのベースとなるような資格を設定したいと考え6資格を設定しました。
6資格の内訳は、ITパスポート試験、情報セキュリティマネジメント試験、G検定、データサイエンティスト検定(リテラシーレベル)、基本情報技術者試験(FE)、CompTIA A+です。まずはITパスポート試験を全社的に進めました。さらに、デジタルリテラシー協議会が定義している「Di-Lite」(デジタル時代の全ビジネスパーソンが持っておくべきデジタルリテラシー)で推奨されている3つの試験(ITパスポート試験、G検定、データサイエンティスト検定)も参考に、6つの資格を設定していきました。
――こういったデジタル人材育成の進捗状況や手応えはいかがですか?
佐伯:2020年から始めたITパスポート試験の取得推進施策は、若手もマネジメント層も関係なく、数千人のレベルで受験。その際の合格率は8~9割ほどあり、一般的なITパスポート試験の合格率約50%よりも断然高かったんです。その要因は、社員同士で切磋琢磨しながら勉強していたというところもありますが、会社がITソリューション事業に大きく舵を切っているという意識が社員にも浸透していて、各自が自分のスキルアップを目指すような組織風土や土壌が醸成できていたためではないかと思っています。
顧客との会話のきっかけにも
――続いて、事業部門であるエンタープライズビジネスユニットの阪尾さんと、IT本部の高木さんにお伺いします。現在の部署や職種、業務内容を教えてください。
阪尾:ソリューションスペシャリストという職種で、大手製造業のお客さま向けのICTの提案を行っています。ソリューションスペシャリストとは、お客さまの事業や業務を深く理解して、キヤノン製品に限らず世の中にあるさまざまなテクノロジーや製品・サービスを組み合わせてお客さまの課題を解決するための貢献をしています。
高木:私が所属するIT本部デジタル戦略部は、①社内のDX推進、②そこで得たノウハウを社外のお客さまへ価値提供していくこと、③それらを支えるデータドリブン経営に向けたデータ分析という、3つのミッションがあります。私はこの3つのテーマをどのように進めていくか、構想戦略のところから実行支援のところまでを担当しています。
――G検定を受験したきっかけは?
阪尾:職種柄インプットが多く必要なので、定期的に業務に関連する展示会に足を運んでいます。2020年春頃にJDLAのブースに出会い、そこで初めて「こんな資格があるんだ」とG検定の存在を知りました。ちょうど2020年頃は、製造業のお客さまもDXに向けて意識が変わってきていて、「製造業でもAIを活用していく」という機運の高まりを強く感じていたタイミングでした。私は文系で、データ分析や機械学習は全く理解していなかった領域でしたが、G検定は文系でも受けられると知って心にぐっと来たんです(笑)。私の仕事は、SEのようにコードを書くわけではなく、新しいテクノロジーを組み合わせて事業に適用できるかどうかの判断をする職種なので、「まさにこれは早めにやっておいた方がいいな」と感じて受験することにしました。
高木:受験した目的は2つあります。一つは、私が担当している課の中にはデータ分析チームがあるため、その中で、最低限の基礎教養としてG検定を勉強してみようと思いました。もう一つは、会社全体でデータ利活用の熟度を上げていくために、「このレベルに達したら推奨資格は〇〇です」といったスキル定義を人事部門と連携して検討しており、その中の一つとしてG検定が資格の候補としてあり、自分も受けてみようと思いました。
――学習を通じての感想や、受験前後での変化があれば教えてください。
阪尾:G検定で得た知識は、フルに活用できています。例えば製造業のお客さま向けに、ネットワークカメラを監視の目的ではなく品質の向上のために活用いただくなど、キヤノンではイメージングとICTの組み合わせのご提案が非常に多いのです。そのためG検定の知識が使える場面が多く、取得して良かったなと思っています。また、合格者に配布される合格認証ロゴをリモート会議の際のバーチャル背景に入れておくと、「G検定取られました?」と、それをきっかけにお客さまと会話に発展することもありますね。
高木:私の場合、大きく変わったことは多くはありません。ただ、G検定の学習を通してAIの歴史的なところやバックボーンを理解できたのは良かったと思います。歴史的な部分などは普段の仕事の中では出てこないので、G検定の勉強をしなければ知る機会がなかったところだと思います。それによって、何かを説明するときに小ネタの一つとして持っておけますし、説得力を持って話ができるようになったんじゃないかなと思っています。
――G検定で学んだことを通して、今後取り組んでみたいことや興味が出てきた資格などはありますか?
高木:今度、データサイエンティスト検定を受けようかと考えています。社内外でDXやデータ活用を推進していくためにも、今後も資格は積極的に取得していきたいと思っています。また、G検定を通して学んだことや得られた知識を生かして、会社全体でデータの利活用を促進することにも繋げていきたいと思っています。社員がG検定などにチャレンジしていければ、さらに会社全体で大きなうねりになっていくと思うので、その機運を高める一役を担っていければと思っています。
阪尾:私も高木と同じく、データサイエンティスト検定も取りたいなと思っています。先ほど、「G検定がフルで役立っています」と申し上げたのですが、とはいえ私の職種的にはまだ足りていない部分が多いのが現状なので、ほかの資格も取って知識を積み上げていきたいと思っています。
採用における業務改善にAIを活用
――では、総務・人事本部の佐伯さんと高畑さんにお伺いします。G検定を受験したきっかけを教えてください。
佐伯:そもそも「施策を出す側として受けなければいけない」という基本的なスタンスがありましたが、なぜG検定を選んだのかというと、高畑が受けていて、2人で施策を打っていくためには、会話を合わせていく必要があると思い受験しました。私は総務・人事本部に来る5年前まではIT本部におり、元々ディープラーニングの世界に興味がありました。その部署では、多くのデータから何か特徴を見出して新たな施策を打っていくことをやりたかったんですが、当時は思うように実現できなかったという経験がありました。ディープラーニングは社会にとっても会社にとってもこれから必ず必要になる、ビジネスが大きく発展していく鍵になるという期待感もありG検定を受験しました。
高畑: ITパスポート試験の取得推進施策の次の一手をどうしていくかを考えていたときに、DXに関連する書籍を一通り読んで勉強しました。その際に、DXのコアテクノロジーはAIやデータサイエンスの領域であることが分かり、かつ人事・総務の領域においてもAIを活用して業務を改善するような事例が実は世の中にはたくさんあることを知りました。「これは自分で勉強して、実際に社内の業務をデジタル化で変革していく機運をつくっていかなければ」と強く感じ、G検定にチャレンジしました。実際に私が取得したあとに、佐伯が取ってくれたのでうまく広がっていったのかなと思います。
――G検定の受験前後で変化や影響はありましたか?
高畑:知識を得たことで、デジタル人材育成を考えていく上でのベースができました。また、実際の業務改善にも今まさに取り組んでいます。例えば、ほかの企業ではすでに導入しているところもありますが、採用において、学生から大量に受け取るエントリーシートをAIで合否を判定するということを、高木さんが所属するIT本部とともにプロジェクトを進めています。それ以外でも、「こういう属性のこういう部門でこの年齢の人にはこういう研修がおすすめです」とレコメンデーションをAIでできるようにするなど、そういったところも将来的には進めていければと考えています。
佐伯:人口減少する中でも、利益を確保して会社が持続的に成長していくためには、生産性の向上は不可欠です。デジタルツールやデータ解析によって解決できることがあれば、積極的に使っていきたいと思っています。G検定の学習によって、その「できることとできないことが」が明確になりましたね。そのため、高畑が「やってみたい」という企画についても、懐疑的に「そんなのできないんじゃないの?」と言うのではなく「こういうふうにすればできるんだろうな」という具体的なイメージが湧くので「まずやってみましょう」と話が進められるようになっています。
また、AIという言葉を漠然と使っていたところがあったのですが、歴史を含めた具体的な知識を体系的に学べたことで、理解が深まり、AIという言葉を使うのが怖くなくなりました。会社全体の施策を打ち出していく立場で経営と話す際にも、しっかりと自信を持って提案できるようになったように思います。
――どういった方にG検定を取ってほしいですか?
高畑:事業部の方とお話をしていると、「お客さまと会話する中で、知識がないと相手にされなくなるケースもある」と聞きます。営業もソリューションスペシャリストであっても、基礎的なスキルを高めていかないと、お客さまの会話でつまずくところが出てくるので、そういう人たちにはぜひ取得してほしいです。また、全社員がきちんと「ITソリューション事業に会社を変えていくんだ」という方針に意識を向けて事業に貢献できるようにしていくためにも、本社部門も基本的なベーススキルの底上げは必要だと思います。
――今後の意気込みやについて一言ずつお願いします。
高畑:私たちの人材育成課は、全社の育成を考える部門なので、学んだ知識を使って、新しい策を打っていきたいと考えています。自分自身としては、G検定は取得しましたが、さらに自分の価値を高めていくためにも、E資格か基本情報技術者試験か迷っているのですが、どちらかにチャレンジしようと思っています。
佐伯:私は、キヤノンMJグループ全体で、全社員がAIのことを正しく理解して、お客さまとの会話がより信頼性の高いものになるように、そして「そういうキヤノンだから任せるよ」と言ってもらえるような会社にしていきたいと考えています。そのためにも、全社でG検定の取得も進めていければと思っています。