[G検定 合格者インタビューvol.19]
日本生命保険相互会社の社内起業プロジェクトに参画したことで、AIやディープラーニングに関する知識の必要性を感じたという営業企画部の小川 真澄(おがわ ますみ)さん。G検定の取得を経て「自身のキャリア展望がより強固なものになった」と語る小川さんは、リスキリングの重要性やキャリアデザインについてどのように考えているのだろうか。
【ポイント】
・入社3年目で社内起業プロジェクトに参画。元々関心が高かったヘルスケアやソフトインフラ領域のアイデアを提出
・ディープラーニングを活用するアプリだったことから、知識の必要性を実感しG検定の受験を決意
・リスキリングを経て、新しいビジネスを作るには「最先端のAI技術の活用は必須」という確信を得る
・「ヘルスケアやソフトインフラ領域での新規事業に携わりたい」というキャリア展望も明確に
・取得推奨資格に設定されているG検定の取得などにより、新規事業に興味がある人材としてアピールする機会にも
G検定合格者プロフィール
G検定2022#3合格
小川 真澄さん
日本生命保険相互会社 営業企画部
社内起業プロジェクトで「マインドフルネスアプリ」を提案
――まず、自己紹介をお願いします。
小川:2019年に日本生命保険相互会社に入社し、2022年4月からで営業企画部でグループ企業の保険商品販売における戦略立案や販売支援を行っています。加えて、2022年10月から翌年3月までは、コロナ給付金のお支払いにかかわる緊急応援業務にも携わっています。
――G検定の受験動機を教えてください。
小川:当社では2020年度から、約2万人の内務職員を対象にした社内起業プロジェクトが始まりました。「ヘルスケア」「子育て教育」「働き方・ダイバーシティ」「資産形成」の4分野から新規事業のアイデアを募集し、発案者自らが社長となりスタートアップ企業と連携しながら事業化を目指すというものです。現在の私の仕事とは関わりがない領域であっても、自分の思いが発信できて実現できるかもしれないと、チャレンジしてみようと思いました。
私が提案したのは、「敏感さん」と言われるHSP(Highly Sensitive Person)をターゲットにしたマインドフルネスアプリのアイデアです。2021年11月頃に応募し、1次審査を通過。AIビジネスを展開しているベンチャー企業やディープラーニングを推進している企業の事例を調べながら、AI技術をどのようにアプリに落とし込んでいくか、自分なりに深く練り直しながらアイデアを固めていきました。しかし、社内の方と話す中で、「そんなことは本当にできるのか」「そんな技術は本当に世の中にあるのか」と言われてしまい、実現に向けた壁の高さを実感しました。私の立場で「この技術を使えばできるんです」と言っても「その技術の根拠は」と言われてしまう。それならば、「ディープラーニングをはじめとするAIや機械学習の基礎的な知識はある」ということを証明したく、そして「資格があれば、自分の発言に説得感を持たせられる」と感じ、G検定を受験しようと思い至りました。
――そのマインドフルネスアプリでは、どのようなAI技術を活用することを想定していたのですか?
小川:ユーザーが入力する情報によって、アプリがそのユーザー専用のサービスになっていくことを想定しており、その過程でビッグデータが必要です。多くのデータが集まれば、とある質問に対して同じ回答をした人や同じような特徴を持っている人に対して、アプリから適切なサービスを提供できるはず。そこにディープラーニングが活かせるのではと考えました。
改めて「ディープラーニングとは何か」をしっかりと自分の中で整理するためにも、G検定を受けてみようと思いました。アイデアを練っている段階では、各企業の事例を「知っているだけ」の状態でしたが、学習することで仕組みやその背景にある機械学習の考え方まで身につけることができました。
――社内起業プロジェクトにチャレンジしたいと思ったのはどのような理由からですか。
小川:そもそも入社時点から私はあまり生命保険に興味がなかったんです。私は日本生命を生命保険会社とはとらえてなく、人の人生を内面からサポートするソフトインフラ企業だと定義していました。生命保険はその手段の1つにすぎません。「日本生命という大きな会社を使って何かできるはず」と考えていました。日本はモノでは満たされてるけど、心が満たされていない日本人が多い。だからこそ日本人の心を満たせる新しいビジネスを、社会人人生を通してできたらいいなという思いで入社しました。
生命保険のビジネスがこの先大きく変わるとすれば、「何か起きたときの予防」ではなく「何かが起こるのを予防」するためのものであるはず。そこで、親和性が高いのがヘルスケア領域やソフトインフラ領域だと考えています。生命保険はケガをしたり不幸があったりと、何か実害が起きたときに保障が担保されるものですが、そうではなく、何か発生する前に予防としてサービスが提供できないか。紆余曲折を経てターゲットを絞った結果、HSPや敏感さんはうつ病や精神疾患になりやすいということもあり、そういった人々の重大事を予防するためのアプリの提案をしました。結果的に、全役員の前で発表する2次選考まで進んだものの落選してしまいました。しかし、自らの今後のキャリアを考える上でも、良い経験となりました。
リスキリングによってキャリア展望を後押し
――日本生命保険相互会社の中で、G検定は取得奨励などされているのでしょうか。
小川:当社では、リテール領域・ホールセールス領域・事務サービス領域・IT領域など、各部門別の取得推奨資格が設定されています。G検定はそのうちIT領域の取得推奨資格に設定されています。
これらの資格の取得状況は、採用要件や昇格要件、評価制度等に関連して組み込まれています。当社の中でも、アグレッシブな方はしっかりとそういった情報をキャッチして受験しているようです。
――G検定を取得することで、ご自身のキャリアアップにもつながるという長期的な思いもあったということですね。
小川:そうですね。自分のキャリアにおいてG検定は絶対に役に立つなと感じています。決して会社から「必須で取りなさい」と言われているものではありませんが、取得していれば社内のタレントマネジメントシステムに登録することができます。それにより「私はこういう分野を勉強しています」「こういう領域に興味があります」とアピールできるようになっています。
――リスキリングによってキャリア展望に変化はありましたか。
小川:考えが変わったというよりは、これまで持っていた考えが強くなりました。先ほどお話したヘルスケアやソフトインフラ領域の新規ビジネスについて、改めて「やりたい」という想いが強くなりました。今後、生命保険以外のヘルスケアの新規事業を作るとなった場合、マスに向けた画一的なサービスではなく、利用者一人一人に合わせた最適なサービスを提供していくことは必ず求められてくるはずです。そのときに「AIは絶対に活きてくる技術だ」という確信を得ました。「自分が考えていたことは間違っていなかったな」「この道でやっていきたいな」という後押しになりましたね。
「同期と平均的に同じ力を持っていても意味はない」
――社内起業プロジェクトなどにチャレンジすることによって、会社の中でキャリアを積んでいくにあたり、どのような戦略を描いていたのですか?
小川:このような新しいアイデアを提出するプロジェクトにどんどん応募していれば、目に留めてくれるチャンスが増えると思いました。「小川はヘルスケアやソフトインフラ領域に興味があるんだな」と、新しいビジネスを始めるときに「小川も入れてやろうと」と声が掛かるかもしれない。そのために、自分なりに実績を積みながら、「考えているだけじゃなくて実際に動ける人材である」とアピールしたいという狙いもありました。ファーストペンギン的に動いていきたいと考えています。
――会社に変革をもたらす人材としてキャリアデザインを考えるとき、重要な視点はどういった点であるとお考えですか。小川さんの後輩や若手に向けたアドバイスをお願いします。
小川:「『会社がこの資格を取れ』って言うから取る」「この部門ではこういうキャリアが王道」といった会社が敷いたレールに乗って安心するのではなく、「自分は何をしたいのか」を大事にすることでしょうか。自分は何の領域を極めればいいのか考えて、そして何か一つ極めることができれば、どこかで必ず活かせるはずです。その極めたものを武器に、会社で個として戦っていくことがこれからの若い人たちには重要なことだと思います。同期と平均的に同じような力を持っていてもあんまり意味はないんですよね。「自分は個として何ができるのか」という観点が必要だと思います。
――最後に、今後のキャリアパスや展望を教えてください。
小川:できるだけ早くヘルスケア領域の新規事業に携わり、子会社を立ち上げるとなったら出向や転籍をして、ずっとそこで生きていきたいと考えています。「生命保険に興味がない」というのは会社にとってはマイナスに思われるかもしれませんが、生命保険に強い思いがある人が生命保険の事業をどんどんやればいい。「このまま生命保険だけでやっていけるのか」という視点で考えたときに、「私が先陣を切って新しい事業で頑張っていきます」というスタンスでキャリアパスを描いています。
また、これから新しい事業を作っていくにあたり、最先端のAI技術の活用は必須です。ただの空想ではなく、「世の中のこういうニーズを満たすために、この技術を使って新しいサービスを提供します」というように、地に足を付けて新しいビジネスを考えていきたいです。G検定に合格はしましたが、試験では知らない単語もたくさん出てきましたし、自分の知識の無さに反省もしました。ディープラーニング領域の情報を常に更新し続けるためにも、引き続き学んでいきたいと考えています。