E資格認定プログラム事業者インタビュー
認定No.00002 zero to one
現在、JDLAには20社近くの「認定プログラム」が登録されています。各認定プログラム実施事業者が強みや特徴を活かして、人材育成に取り組んでおられます。本シリーズでは、E資格認定プログラム事業者へインタビューし、認定登録された経緯や各プログラムの特徴をご紹介していきます。
認定No.00002は、zero to one。
最先端の教授法を用いてデザインされた非同期型の完全オンライン教材で自走できるAIエンジニアを育成しているそう。完全オンライン教材でどのように成果を出していくのか、AIエンジニアに必要な姿勢とは何かうかがいました。
竹川 隆司 様
野村證券にて国内、海外(ロンドン)勤務等を経て、2011年より米国ニューヨークにてAsahi Net International, Inc.を設立。同社代表取締役として、高等教育機関向け教育支援システム事業のグローバル化を推進。2014年より一般社団法人インパクトジャパンにて、エグゼクティブ・ディレクターとして、カタールフレンド基金の支援を受けた、東北での起業家育成・支援プロジェクト「INTILAQ」(インティラック)を主導、仙台市にイノベーションセンターを設立。2016年、日本最大のMOOCプラットフォームgaccoにて、初めての地方創生コースを開講。2006年ハーバード大経営学修士(MBA)。
認定プログラムの特徴について教えてください
(コンテンツ)
E資格の認定プログラムの内容は、それぞれの領域での第一人者である有識者(東京大学大学院松尾豊教授、東北大学大学院岡谷貴之教授)に教材開発の初期段階から監修してもらっています。何を学習したらよいかという範囲など、シラバスを作成する段階から、できあがったコンテンツをレビューし、スライド一枚から原稿に至るまで、細やかな監修をしてもらい、コンテンツの網羅性と内容の正確性を担保しています。また、AIの世界は変化が激しいため、毎月教授陣との定例ミーティングを通じて、マイナー・メジャーなアップデートをしています。最新の情報や知識を持っている教授陣からの監修は、講座の質を保証し、信頼性を高めていると思います。
(学習方法)
オンライン教材には大きく2つのタイプがあります。1つは、指定された時間帯に開催されるズーム型の講義や指定された時間帯に聞き逃した講義を録画したものを後で視聴するタイプのオンライン教材です(いわゆる「同期型」)。このタイプのオンライン教材は、本質的に、指定した時間に受講者が講義を受けることを前提として教材が設計されています。その場に居合わせた受講者に合わせることができるというメリットがある一方、その場に参加できなかったは受講者は、プライベートなサポートが提供されない限り、講義の録画を視聴するだけになってします。
もう1つは、講義もプログラミングの演習も事前にセットされ、リアル性がない一方で受講生が受けたい時にいつでもオンデマンドで学ぶことができるタイプです(いわゆる「非同期型」)。当社のオンライン教材は、最新の教育工学の学術的な知見を反映し、ビデオ講座もプログラミング演習もオンデマンドでブラウザだけで完結する非同期型の「完全オンライン教材」であるところが特徴です。これを実現するためには、最先端のクラウド技術を駆使しオンデマンドでスケーラブルな演習環境を提供でき、かつ、全ての講義内容を事前に高度に設計しておく必要があります。この点では、インタラクションデザインの理論にも基づき、高い学習効果がでるように、適切なタイミングでクイズや演習を入れるなど、システマチックな設計が施されています。アメリカでは、インタラクションデザインを実践したオンライン教材の開発・提供がもう20年前から進んでおり成果を出しています。対面講座がないにもかかわらず、E資格合格の結果を出し続けているのは、当社のオンライン教材がインストラクショナルデザインに基づき、しっかりと成果が出るよう設計されているからであると自負しています(合格率は比較的高いです)。
オンライン教材のサポート機能でもいくつか工夫をしています。クラウド演習ではプログラミングの課題毎に自動採点ができますので、学習を進めながらすぐに成果の確認が可能です。また、これまで3年以上にわたってご質問いただいてきた内容を参考に、課題毎に1〜3段階のヒントを確認することができる機能も、2020年10月より追加しました。このヒント機能と自動採点機能を活用していただき、自主学習を促進しています。もちろん、それでも分からない場合は、メールで問い合わせていただくことも可能です。
なお、受講生の総学習時間は、60時間~100時間と個人により差があります。ただ、ビデオ講座の視聴(約30時間分)は修了要件には加えておらず、知識や経験に応じて自由に学習に活用していただいています。中には、クラウド演習だけで修了要件を満たして試験に臨む人もいます。
完全なオンライン教材ですが、モチベーションを保つための工夫はありますか。
もともと、資格を取得したいと目的意識が高い人が多い傾向にありますが、それでも、受講生がモチベーションをさげてしまうのは、何かわからないことがありつまづいたときだと思います。当社のLMSでは、なるべくこの「つまづき」を避けるような工夫をしています。その一つが、先ほど説明したヒント機能での疑問の解消です。また、全てのビデオ講座は字幕が表示されるようになっているため、その字幕に印をつける「ブックマーク」機能で重要なところはメモとして切り取り見返すことも可能です。自社開発のシステムだからこそできることだと思います。
このような一人で受講する方にもモチベーションを保ってもらう工夫はしていますが、法人で受験される場合には、なるべく2人以上での受講をおすすめしています。また、オプションとして、受講生が交流できるオンラインフォーラムがあるので、質問を投げたり回答したり、と互いに学び合いながら刺激になっているようです。
これは、モチベーションというよりは、受講者のメリットかもしれませんが、コストパフォーマンスも意識しています。プログラムは厚労省の教育訓練給付制度の対象なので、E資格向けのプログラムなら最終的に45000円で受けることができます。コストを意識することでモチベーション維持にもつながればと思います。
受講生にはどのような人が多いですか。
これまでは、企業向けの提供がほとんでしたが、2020年10月から厚労省の教育訓練給付制度の対象となって以来、個人での受講者も増えてきました。企業向けは、ここ数年で多くの企業がAI事業を立ち上げ始めており、社内エンジニアのスキルアップや新規立ち上げ部門の人員の足腰を鍛える目的として、E資格を受験する場面が目立ちます。講座を提供してきた具体的な業界としては、当初はソフトウェア、情報処理系が多かったですが、最近は加えて、製造業、金融、製薬、通信、化学など多様。ニーズの高まりを感じますね。
当社のプログラムは、全くの初心者向けではなく、数学の基礎知識(大学理系入学程度)やプログラミング知識など、ある程度の前提条件は置かせてもらっています。今後も、そのハードルを下げていく予定はないのですが、受講にあたって心配な方には、参考図書を紹介し事前に勉強するよう促しています。
そもそも、E資格取得ははあくまで過程で、最終的には実業務で活躍できるAIエンジニアになっていただきたい。そのAIエンジニアは、自己完結型でなくてはいけないと思いますし、同じように受講生の皆様にも、自己完結型で学ぶ姿勢を身に着けてもらいたいと考えています。講座が終わってからは誰も助けてはくれませんからね。私たちのオンライン教材は、そんな自己完結型の学習スタイルを促す仕組みが何重にも整えられているのです。
自社の強みや差別化できるポイントは。
なんといっても、教育専業という点が一番の特徴だと思います。企業ミッションにもあるとおり、社会に必要とされる人材を輩出し続けていくために、最適な教授法や教授システムを追求して、今の完全オンライン教材の提供に繋がっています。そもそも、私もCTOの瀬谷も「教育」事業の専門家。グローバルでの教授法に関する知識や情報、ネットワークがあります。世界の高等教育やテクノロジー教育の学会にも参加しており、トレンドも肌で感じています。さらに、私たち自身もUdacityやCourseraなどで最新の教育講座(オンライン)を受講し修了をすることで、変化に対応したり、ハーバード大学やスタンフォード 大学の教授など、グローバルな有識者とのつながりを得たりしたています。こうして常に、私たち自身も世界から学び続け、受講生の皆様に効果的な「教育」を提供すべく尽力しています。
E資格の認定プログラムに参加された経緯をおしえてください。
教育専業の企業として、日本社会に必要なAI人材を数万人という単位で輩出していくためには、「資格」という仕組みが最も効果的であるという思いがずっとありました。それも、ある程度社会全体に「認められた」資格でなければ広がらないだろうとも。産学連携、中立的で難易度も一定以上以上であることが、社会的に認められる資格の条件でしょうし、受けたいと思う人も増えるでしょう。
海外では、例えば民間企業の質の高いオンライン教材を受講・修了したことは、次のキャリアにもつながる履歴として採用や転職に活かされることも多いのですが、日本では、第三者機関による”お墨付き”のほうが重視される傾向にあると思っています。このような考えを持っていた時、JDLAのE資格は、まさに当社が意識していた仕組みであったし、またAI人材の輩出という理念にも賛同したので参加しようと思いました。
最後にメッセージを!
私たちは変化の激しい世界に生きています。グローバルな視点でみると日本はあらゆる面でスピードも質も遅れ始めていると危機感を覚えており、AI業界でも同様です。ただ、重要なのは、世界が変化することを前提に自分で学ぶこと「学び続けること」だと思います。何か課題に直面したら、自分で学びその壁を乗り越える。自己完結型の人がもっと増えれば変化へも対応できるようになります。当社は、自らも学び続けつつ、受講生の皆様が学ぶための最適なコンテンツやツールは提供していきますが、学ぶのはやはり本人。自ら学ぼうと思わなければ進みません。実はこのコロナ禍でも欧米人の多くは特にオンラインを活用して自主的に学び続けています。変化の時ほど学びは大切だと思いますので、私たちとともに学び続けていきましょう!!
zero to oneの講座はこちら。