近年は、AIの技術が進歩しており、さまざまな場面で利用されるようになりました。ビジネスシーンに用いる機会も増えており、多くの業界で利用実績が増えています。
AIの導入を検討している方も多いかもしれませんが、実際にどのように進めればよいのかわからず困っている方もいるのではないでしょうか。AIについての知識を身に着けるとともに、業界ごとの活用事例を知ることが重要です。
今回は、AI技術の活用事例を業界ごとに紹介します。また、AIの具体的な活用方法やメリット、AI技術について理解するおすすめの方法についても解説します。AIの活用に向けて、ぜひ今回の記事を参考にしてください。
AI(人工知能)とは
そもそも、AIとはどのような技術なのか、理解できていない方も多いのではないでしょうか。AIとは「Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)」を略した言葉で、日本語では「人工知能」と表現されます。
当協会の代表理事を務める、東京大学大学院工学系研究科 教授の松尾 豊は、「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれを作る技術」と定義しています。
世間一般では、人間の脳がおこなう認識・理解・推論などの知的活動をコンピュータにおこなわせる技術を、総称してAIと表現するケースが多いです。近年は、ChatGPTの登場などでAIが広く普及している時代になりました。
AIに関する研究は1950年代から実施されており、現在に至るまで継続しています。今後もAIの進歩はさらに進み、一般家庭や事業で活用される機会は増えるでしょう。
【業界別】AIの身近な活用事例5選
近年、AIが活用される事例は多くみられるようになりました。特に会社が事業活動に取り入れる例が多いため、AIが身近になったと感じる方も多いでしょう。
これから自社の事業にAIの活用を検討している方は、これまでの活用事例を参考にしてみてはいかがでしょうか。AIの活用事例として主なものを、業界別に以下に5例紹介します。
- 医療業界
- 製造業界
- 農業
- 教育業界
- 金融業界
ご自身の業界の事例を参考にすることは、AI活用を成功に導くために大いに役に立つ情報になるので、ぜひ参考にしてください。
医療業界
医療業界におけるAIの活用事例としては、非接触検温のツールが挙げられます。近年は、病院に行くと最初に検温をするケースが多くなっており、ほとんどの病院で非接触型のツールを導入しています。
手首やおでこにハンドタイプの検温器をかざすと、瞬時に体温の測定が可能です。また、AI顔認識技術と赤外線カメラを用いた機器を入り口付近に設置して、覗き見るだけで検温ができる便利なタイプも普及しています。
マスクを外すことなく検温ができる最新の顔認証技術は、近年の感染症予防の観点からも注目を集めました。今後も、医療業界におけるAI技術の導入は進んでいくと予想されます。
製造業界
製造業界でも、AI技術の活用が進んでいます。たとえば、自動走行ロボットは製造業を営む企業の工場などで広く利用されています。ロボットが移動位置や障害物などを検知し、プログラムに組み込まれた作業を自動で実施してくれるツールです。
また、不良品検知にもAI技術が活用される事例が増えています。これまでは不良品の検知は人の目でひとつひとつ実施せざるを得ませんでしたが、AI技術の導入により短時間で大量の検体の確認が正確に実施可能です。
異常検知や品質管理にもAI技術が役立ちます。
例えば、AnyTech株式会社が開発したAIソリューション「DeepLiquid」は、動画解析を用いて流動体(気体・液体)の性質をリアルタイムで判定することが可能です。
現在は製造業の現場で粘度の解析に利用されていますが、将来的には食品や医療分野などでの応用も期待されています。
この技術は流体力学を組み込んだ独自のAIモデルとCGで生成された学習データを使用しており、異常検知や品質管理の自動化に貢献すると考えられます。
内部リンク:「流動体を捉えるAI、新しいビジネスの切り口を開発」
製造業界におけるAI技術の活用は、職人にしかこなせなかった仕事を誰にでも取り組めるようにしたという点で、大きなメリットがあります。
農業
農業の業界においても、AIを活用する事例がみられます。近年、農業の業界では人手不足や従事者の高齢化が問題視されています。AI技術の活用により、人の手で作業をしていた部分の大半を自動でおこなえるようになりました。
たとえば、収穫物の仕分け作業をAI技術で実施する事例があります。収穫物は品質や大きさなどから等級ごとに分けるのが一般的です。最初に大きさ・重さ・色合い・曲がり具合などの基準を設定し、AIが基準に従って仕分けを実施します。
農業業界においては、人手不足は喫緊の課題とされています。AIの活用事例は、今後ますます増えてくるでしょう。
教育業界
教育業界でも、AI技術の活用が顕著にみられます。たとえば、学習塾などにおいてはAI技術を活用した個別のカリキュラム構成をおこなっています。全国の生徒のデータをベースとして、生徒1人1人に適したカリキュラム構成を自動でおこなう技術です。
また、リモートシステムを活用した授業展開も典型的なAI活用の事例といえるでしょう。パソコンのカメラを駆使し、教室に集まらなくても授業が受けられるようになり、教育手段の多様化に貢献しています。
学力の診断や受験対策にもAIが活用されています。
ギリア株式会社では、AI技術を活用して、「学習診断システム」「入試問題的中AI」の2つのシステムを開発しました。これらのシステムは家庭教師派遣事業を展開している株式会社トライグループで活用されています。
「学習診断システム」では、AIが短時間で学習者の学力を診断します。
従来の学力診断方法では、1科目につき200問もの設問に解答する必要がありましたが、この新サービスでは、蓄積された試験データにディープラーニングを適用し、必要最小限の設問数で学力の状況(得意分野・不得意分野)を診断することが可能です。
「入試問題的中AI」では、約200校の過去問題を分析し、それに類似する問題を、データベースに取り込んだ参考書から選んで出題します。
AIによる診断結果に基づいて提供されたカリキュラムは、受講者の学力向上に寄与しており、この成果は「日経xTECH EXPO AWARD 2019」で教育AI賞を受賞するほど評価されています。
内部リンク:「AIで人間の能力の拡張を」
AI技術の活用により、教育手法も変化していくことが予想されます。より効率よく教育を実施する方法が今後ますます増えていくでしょう。
金融業界
金融業界においても、AI活用の事例がみられます。たとえば、クレジットカードの事業においては、不正使用の検出をAI技術が実施する事例があります。
クレジットカードの不正使用を検知するためには、利用者1人1人の利用パターンを把握したり、使用状況のモニタリングをしたりする作業が必須です。人の手では、数多くの利用者の状況把握は難しいですが、AIであれば膨大な量のデータ分析および管理が可能です。
不正使用が検知された場合は、自動的にメールなどで通知がおこなわれるシステムも実際に導入されています。人の手では不可能である膨大なデータ分析も、AIであれば瞬時におこなえるため、活用の事例は今後も増えていくでしょう。
AIの面白い活用事例3選
業界別にAIの具体的な活用事例を紹介しましたが、他にも個性的で面白い活用事例があります。AI技術は、利用する方の工夫次第であらゆる可能性を秘めているといえるでしょう。
AIの面白い活用事例として、以下に3例紹介します。
- AIモデルによるテレビCM出演
- 料理ができるAIロボット
- ペットの疾患予測
今回紹介する事例以外にも、AIはまだまだ活用の方法があると考えられます。これからAI活用を検討している方は、自社に最適な方法を検討してみてください。
AIモデルによるテレビCM出演
AIにより生成したモデルを、テレビCMに実際に出演させた事例があります。実在する人に近い映像を生成できる画像AIの技術を駆使して、CMに出演するモデルを生成した実例です。
実際のタレントの1万種類の画像をモチーフとして、AIがデータを自動加工し、さまざまなタレントの姿を生成します。多様性を主張するCMのモデルとして、AIで生成されたモデルの画像が多数用いられました。
実物に近い画像をAIで生成する技術も発達してきています。AIで生成した画像をテレビCMを始め、各種メディアで活用する事例は、今後も増えてくるでしょう。
料理ができるAIロボット
料理ができるAIロボットを開発した事例もあります。他人が料理をしている動画を読み取らせるだけで、同じ料理を再現できる能力があるAIロボットです。
AIロボットは、人間と同様に料理動画をとおして新しいレシピを理解し、実際に料理を作ったという面白い事例です。また、既存のレシピどおりに料理をするにとどまらず、そこからオリジナルレシピの考案をするという優れた能力を披露しました。
飲食業においても、人手不足に悩んでいる方もいるかもしれません。料理ができるAIロボットが普及すると、調理スタッフの不足に悩むことはなくなるでしょう。
ペットの疾患予測
飼っているペットの疾患を予測するという機能を、AIにより実現させた事例があります。ペットの顔写真をシステムで読み取り、一定期間内に疾患を発症する可能性について予測できるという画期的なツールです。
このツールは、過去に病気を発症したペットの品種・性別・年齢についての膨大な実績をデータ化したものがベースとなっています。人の手では集計・抽出が難しいビッグデータも、AIであれば瞬時に対応できます。
将来、ペットの様子からどのような疾患を患っているのかAIにより判断できる時代が来るかもしれません。AIの活用事例として、興味深い実績といえるでしょう。
AIの活用方法6選|AIが役立つビジネスシーンを解説
AIの活用事例を具体的に紹介してきましたが、AIは具体的にどのような能力を持っているのでしょうか。AIをビジネスシーンで活用するため、持っている能力を理解することは大切です。
AIの活用方法における能力として、主なものを以下に6種類紹介します。
- 自然言語処理
- 画像認識
- 音声認識
- 予想分析
- 最適化
- 異常検知
AI技術は目覚ましい早さで進化しているため、今後も活用の範囲がますます広がっていく可能性は十分にあるといえるでしょう。
自然言語処理
AIは、自然言語処理ができます。自然言語処理とは、テキストデータを対象とした処理で、文脈を自動で把握して言葉の意味を解析する処理技術のことです。
AIが自然言語処理技術を用いて対応できる文章は多岐にわたり、論文レベルの高度なものから日常会話に至るまで解析が可能です。膨大なビッグデータをベースとして、あらゆるパターンに対応する能力を持ちます。
自然言語処理技術は、現在では自動翻訳システム・文章要約サービス・ChatGPTなどで活用されています。指定したテーマに沿った文章を自動的に生成する技術でもあるため、今後の活用機会はさらに増えてくるでしょう。
画像認識
画像認識も、AIが持つ技術の1つです。画像認識とは、対象となる画像に写っている人の顔・物・文字などを自動的に識別する技術のことを指します。
以前は、識別をおこなうコンピュータに大量の画像パターンを記憶させて判断のベースとする手法を用いていました。一方近年では、AIが自動で画像の特徴を抽出し、高い精度で画像を識別することが可能となっています。
画像識別技術は、顔認証システム・自動車の自動運転・画像文字のテキスト化(OCR)など、幅広い活用例がみられます。さまざまなジャンルの業界で利用できる可能性がある、優れた技術といえるでしょう。
音声認識
AIは、音声認識の技術も保有しています。音声認識とは、人間や動物などが発した音声を解析してテキストデータに変換したり、その音声内容に応じた動作を機器に実行させたりする技術のことです。
音声認識技術は、自動で文字起こしができるアプリケーションに導入されています。また、家電製品を音声で稼動させる仕組みを導入しているメーカーも増えています。
スマートフォンに質問をして回答が返ってくるツールを活用している方もいるのではないでしょうか。音声認識技術は、事業向けだけでなく日常生活においても活用事例が多くみられています。
予測分析
予測分析も、AIが持つ技術の1つです。予測分析とは、過去から現在にわたって大量に蓄積されてきたさまざまな分野のデータを分析して抽出をおこない、将来の傾向を予測する技術のことです。
予測分析といえば、天気予報を連想する方も多いでしょう。天気予報には、過去の気象データをベースとして未来の天気を予測する技術が用いられています。近年はAI技術を導入し、膨大なデータを基礎として予測ができ、精度が高まってきました。
また、インターネットにおける閲覧履歴から最適な広告を表示する機能も予測分析の活用事例です。今後は、マーケティングツールとして、予測分析を利用する機会が増えてくると考えられます。
最適化
AIには、最適化の技術もあります。AI技術における最適化とは、特定の作業をこなす際に、予想される制約や相反する目標を考慮に入れて最良の解決手順を選択する技術のことです。
たとえば、運送や配送業務の効率化において、最適化技術が活用されています。これまではドライバーの経験や知見により配送順やルートを決定していたところを、AIの導入により渋滞状況等を踏まえて効率的な運送が可能となりました。
商品の在庫管理や従業員のシフトを管理する場面でも、最適化技術を利用する事例が増えています。事業展開におけるさまざまな場面で、最適化技術は活用されていくでしょう。
異常検知
異常検知の技術も、AIが持つ能力の1つです。異常検知とは、AIに正常時の画像・動画・音声などのデータを記憶させて、確認対象が正常な範囲から外れた状態か検出する技術のことです。
前述の製造業界における不良品検出も、異常検知技術の事例に該当します。商品だけでなく、医療現場において病変部位の発見にも活用されています。防犯関連の会社におけるセキュリティシステムへの導入も、活用事例の1つです。
AIの異常検知技術の導入により、これまで属人性の高かった判断も正確かつ短時間で実施できるのは、大きなメリットといえるでしょう。
AIにできることは知れたが、具体的に実務でどう活用していけばよいかわからないという方も多いのではないでしょうか。AIについて体系的に学びたい場合は、ぜひG検定を活用してください。体系的にAI・ディープラーニングを学習することで、「AIで何ができて、何ができないのか」「どこにAIを活用すればよいか」が理解できるようになり、ビジネスシーンにおいて実践的に役立てることができます。これからAI活用を考えている方に特におすすめの検定なので、ぜひ検討してみてください。
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AI活用のメリット
AIの活用事例や技術に関して具体的に説明してきましたが、AIの活用にはどのようなメリットがあるのでしょうか。AI活用のメリットとして、主に以下の3点が挙げられます。
- 迅速な対応が可能
- 人件費削減が可能
- 業務の効率化ができる
AIは対象データに対してリアルタイムに分析や処理を実施するため、迅速でタイムリーな対応が可能です。顧客対応や防犯対策など、瞬時に判断を要する場面などに、高い能力が期待できます。
また、AIの活用により人件費の削減効果が得られるのも大きなメリットです。これまで人の手でおこなってきた単純作業は、AIに置き換えられる可能性が増してきました。作業スピードも人より早いため、業務に割く人員を減らせるのも大きなメリットです。
さらに、単純作業をAIに任せ、従業員は人にしかできない仕事をするなど業務の効率化も図れます。AIを業務に積極的に活用することで、以上のような多くのメリットが享受できます。
AIの活用方法を学ぶならG検定がおすすめ
以上のように、AIの活用には多くのメリットがあります。しかし、実際にAIの導入を進める際にはどのような手順を踏めばよいのかわからない方も多いのではないでしょうか。
AI活用の実践的な方法を学びたい場合は、G検定の利用をおすすめします。G検定では、AIでできること・AIを活用する適切な場面・AIを活用するために必要なことを体系的に学べます。
G検定の学習を通して、ご自身の事業においてAIを活用する際の具体的なイメージをつかむのに役立つ知識が得られるでしょう。AIについての理解を深めたい方は、ぜひG検定の利用をご検討ください。
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まとめ
AIの活用事例について、業界別に紹介してきました。AIの活用事例は増えており、今後もますます増えてくると予想されます。また、AIには多くの能力があり、活用できる範囲も広いことについても解説しています。
しかし、AIの導入を進める際にはどのような手続きを取るべきかわからない方も多いのではないでしょうか。予備知識がないと、AIの導入を進めるのは困難です。
AIについて体系的に学びたい場合は、ぜひG検定を活用してください。AIの最新技術や関連法令など幅広い知識を体系的に身に着けられるため、実践的で役に立つでしょう。これからAI活用を検討する方に、特におすすめの検定です。