札幌AIラボの挑戦~E資格チャレンジが導く新たなAIエンジニアの未来~

札幌市は、国内有数のIT産業地域であり、AI技術を活用した産業促進に取り組んでいます。2023年度からは、市内のAIエンジニア育成の一環としてE資格認定プログラムの受講から資格試験受験までがパッケージになった特別プログラム「E資格チャレンジ」を開始しました。札幌市(自治体)がAIエンジニア育成に取り組む理由や具体的な活動内容について、札幌市 経済観光局 経済戦略推進部 イノベーション推進課 IT産業係 樋口拓哉さんにお話をうかがいました。

札幌市内のAIエンジニア育成を実践する”札幌AIラボ”とは

札幌市は、2016年に北海道大学等の最先端かつ広範な研究開発と、それを社会実装する意欲的なIT企業群という2つの札幌の強みを活かすことで、AI等の先端技術の活用や、他分野との融合によるイノベーション創出とエコシステム構築を実現するため、産学官連携組織「札幌市イノベーション推進コンソーシアム」を設立。現在では、200を超える企業や団体が参加しています。
札幌AIラボは「AI技術の社会実装を先導する都市さっぽろ」の実現を目指し、札幌市イノベーション推進コンソーシアムの専門部会として、2017年から活動を開始しました。

札幌AIラボの主要な活動は、新規ビジネス創出支援や情報発信・普及啓発、人材育成です。人材育成では、これまでに経営層、エンジニア向けの勉強会を実施。累計1,000名以上へ講座を提供しました。
また、世界的なスタートアップイベントのSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)など様々な展示会に出展したり、企業からの相談を受けて産学連携・企業提携プロジェクトのコーディネートをしたりと、新規ビジネスの創出に向けて積極的に取り組んできました。

札幌AIラボの運営体制には、AI先端技術の専門家であり複数の企業の社外取締役を務める川村秀憲教授(北海道大学大学院情報科学研究院調和系工学研究室)のほか、北海道大学発ベンチャーである調和技研の中村代表など、多様なメンバーがそろっています。産学のバランスが取れているだけでなく、専門性も高く、実績をもった優秀なメンバーによるサポートが可能です。

札幌AIラボは、地域の産業活性化において「人材育成」は重要な役割を果たすと考えています。AI技術を社会実装するためには、ビジネス想起に加えてそれを実現するエンジニアの存在が欠かせません。

札幌市は、従来よりIT産業が活発な地域であり、ポテンシャルの高い人材が多くいます。市内において、AIエンジニアをさらに高めて増やしていくためにも、札幌AIラボでは人材育成の取り組みをさらに強化する必要があると考えています。

”E資格チャレンジ”導入のきっかけ(AIエンジニア育成)

札幌AIラボは、2017年の設立当初からAIを活用する経営層やエンジニア育成にかかわるセミナーを実施してきました。ただ、座学だけでは、効果的なエンジニア育成を実現するのには課題があると認識し、体系的なAIエンジニア育成の取り組みが必要だと感じました。

札幌市がJDLAの行政会員だったこともあり、E資格の制度に関心を持ちました。仙台市での先行事例を鑑みて、2023年から札幌市でもAIエンジニア育成に特化し、E資格の認定プログラムの講座を提供する運びとなりました。「E資格チャレンジ」と称して、2023年8月に募集開始し、10月から講座を提供しました。

E資格は、国内で唯一のAIエンジニアに関する資格。講座を通じて実践的なAI技術について幅広い知識を得られるだけではく、資格を取得すればエンジニア自身の力量を対外的に示すことができます。E資格の取得は、市内のポテンシャルの高いエンジニアのレベルアップにつながると思います。

札幌AIラボは、AIエンジニアの輩出に向けて、普及・研修・実践のそれぞれの3つの取組を行っています。普及セミナーにおいて関心を持ったエンジニア向けに、E資格認定プログラム講座を提供。さらに、実践の場として札幌AI道場を用意しています。
※札幌AI道場とは、実課題に基づく課題解決型AI人材育成(PBL)とAI開発の実証(PoC)を同時に行うプログラムです。参加者は実課題に基づくケーススタディを通じて、座学では得られない実践的な開発の経験が得ることができ、課題提供企業は自社に適したAI導入の把握、AIモデルの試験的な構築を無償で行うことができます。

AI知識の啓発、知識・技術のレベルアップおよび実践機会の提供と、知識取得から実践力の向上までを網羅した取り組みがあることで、市内のAIエンジニア育成を推進していきます。

※2024年度も、同様にE資格チャレンジの活動を予定しています。

AIエンジニアのレベルアップを目指す「E資格チャレンジ」とは

E資格チャレンジでは、通常のE資格取得の過程と同様に認定プログラムを受講していただきます。講座は、E資格認定事業者(2023年度はzero to one社が受託)より提供されており、同社の講師による講座をオンラインで受講できます。定められた期間内に指定されたカリキュラムを修了することで受験の資格を取得できます。

受講対象者は、札幌市内在住の社会人であることが条件ではありますが、年齢制限は特にありません。AIエンジニアリングは、数学などの特殊な知識が必要になるので、応募いただいた際に、知識を事前確認する場合がありますが、原則意欲のある方で学習時間を確保できる方なら誰でも参加できます。

また、オンラインでの勉強会の実施やキックオフイベントなど、横のつながりを意識できる取り組みもあります。

受講時間は、約70時間(深層学習の演習を含めると120時間程度)のプログラムとして設計されています。講座開始から受験まで約4か月程度あるので、1日数時間の学習が必要ですが、基礎的な部分もあるので知識があるなど、人によっては短縮できる可能性もあります。

E資格チャレンジは、費用の面やサポート体制など札幌市内の受講生にとって有益な取り組みであると思います。個人で受講・受験する想いがあった場合、E資格チャレンジの利用をぜひ検討してもらいたいです。

合格率88.2%!初年度(2023年度)のE資格チャレンジ結果

2023年は、10月からE資格チャレンジを開始して、2024年2月のE資格試験を目指すスケジュールとしました。定員を20名としたところ、うれしいことに倍の40名の応募がありました。事前に数学やプログラミング経験を問うチャレンジテストを実施し、テストをクリアされた20名の社会人の方がE資格チャレンジに参加されました。

参加者はPythonでの開発経験があったり、高校数学の知識に自信があるなど、AIエンジニアとしての基礎的な知識や経験を既にお持ちの方が多い印象でした。

認定プログラムは、独自のラーニングシステムでオンライン受講ができるため、参加者のみなさんは、仕事をしながら時間を見つけて取り組まれていたようです。平均の学習時間は、3か月間で80時間程度でした。

副次的成果としては、参加者同士で、SLACKのチャネルをつくって相互に情報交換するなど、自発的なコミュニティ形成がありました。札幌AIラボでも参加者同士の横のつながりの促進は積極的に取り組みたいテーマでもあります。受講後もつながりを持てるようなコミュニティは重要だと考えています。

E資格取得の結果ですが、17名がプログラム修了、15名が合格されました。合格率でみると、JDLAが公開している72.61%(2024#1)よりも、10ポイント以上多い88.2%でした。短期間ではありますが、E資格取得に向けて満足できる結果を残すことができたと思っています。

残念ながら、今回不合格だった方については、認定プログラムを修了していれば、修了日から2年間は有効期限があるので、再受験が可能です。是非、諦めることなく、継続してE資格取得を目指してもらえればと考えています。

E資格チャレンジを目指す人へのメッセージ

2024年度も、E資格チャレンジは秋ごろから開催する予定です。前回の反省を活かして、適宜のタイミングで受講生同士が交流できる機会をつくりながら、さらに互いに切磋琢磨しあえる場にします。オフラインでの個人の進捗の発表や質問会など、横のつながりが意識できるよう改善する予定です。

今後、生成AIを始めとしてAI技術の活用はますます増えていく時代になります。それに伴いまして、エンジニアの需要も増えることが見込まれます。E資格チャレンジは、個人のスキルアップや知識向上につながるだけでなく、札幌市全体の活性化にもつながっていくと信じています。ぜひとも、AI開発への熱い想いがある方はチャレンジしてほしいです。

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