CVPR (Conference on Computer Vision and Pattern Recognition)は、コンピュータビジョン、人工知能、機械学習、および関連分野の研究開発におけるトップカンファレンスの一つであり、業界最先端の研究成果がここで発表される。今年は 6 月 17 日から 21 日までの 5 日間、アメリカワシントン州シアトルのコンベンション・センターで開催された。本稿は、現地参加したリサーチャー2名(株式会社モルフォ)による現地レポート。興味深かったセッションの紹介を交えつつ、学会の様子を時系列で報告するDAY3となる。
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6月19日(水)
本日からは投稿論文の発表がメインとなり、午前と午後にそれぞれ 1 時間半のオーラル発表が数本行われ、採択論文の著者たちがプレゼンを披露する。オーラルの後は別建物の会場でポスター発表(午前 444 本、午後 454 本)およびいくつかの企業およびラボによる研究成果のデモが行われる。基調講演やパネルディスカッションといったイベントも毎日開かれ、専門分野を離れて視野を広げることができる。
賑わうポスターセッション会場
ポスター発表
ポスターセッションは午前と午後に 1 時間半ずつ開かれる。会場には多くの人がひしめき、各ポスターには常に 4、5 人が入れ替わり立ち代わり話を聞いている。とりわけ highlight のラベルを与えられた研究には人だかりができていた。こちらから説明や質問を求めると快く応じてくれるが、時間が限られているため、十数本しか十分に話を伺うのが限界で、他は流し見することになる。なお会場にはバナナやスナックが置いてあり、自由に栄養補給できる。個人的にはかなり面白いと同時にかなり疲れた。90 分うろうろ立ちっぱなしで、高度な内容を真剣に聞くことになるので、体力勝負だ。その代わり、この短時間で多くのアイデアを吸収できるのはかなりありがたい。最初は興味が薄かった研究内容でも、立ち止まって話を聞いてみると実は汎用的で深いアイデアが混ざっていたりするので、貴重な体験であった。
基調講演
ロボティクス研究の第一人者 Joshua Bongurd 氏による、コンピュータビジョンとロボティクスの融合可能性について。と言いつつ、話はカエルの胚発生から始まる。卵割の過程で各細胞は互いに協調して、外界の刺激に反応し、自発的に動き回って自身の形状変化も行う。現状のロボットはここまでの流動性は持ち合わせていないと問題提起。これを可能にすることを目指し、コンピュータによる進化的アルゴリズムと生物による実検証を行った過去研究を紹介する。心細胞を別箇所に移植して自発移動するボットが作れることを進化アルゴリズムが予測したことを踏まえ、実際の細胞で再現実験に成功。他には独立した細胞をかき集めるというシンプルな行動ルールをもつ生体ボットが、長期的には自己複製を行う挙動に昇華することをシミュレーションで示したり、ソフトマテリアルで構成された特定タスクを行うボットが、体の一部を欠損した状態でも自発的な体および機能を変形させてタスクを継続することをシミュレーションで発見。最終的には、生物のような協調性とダイナミクスを持つエンティティが、各自多様性をもって発展する将来展望を述べて講演を締めくくった。この思想は前日の Implicit Neural Representation for Vision のワークショップで Srinath Sridhar 氏が述べていた思想に通じるものがある。今後は computer vision はより multi-disciplinary な広範な分野として相互発展するだろうか。少なくとも、分野横断での知識吸収や共有の必要性を強く感じた。
(角田良太朗、三宅博史)
JDLAでは、2024年7月18日(木)16:00よりオンライン開催のCVPR2024 技術報告会を予定しています。イベントページはこちら