今は文系でもAI知識が必須! 危機感から資格を取得したソフトバンク社員の学習方法とは?

ソフトバンク株式会社(以下、ソフトバンク)は、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、情報革命を通じた社会貢献を推進してきました。同社は早くからAIの可能性に着目し、AI人材育成にも注力。「G検定」「E資格」(JDLA)の資格取得を推奨し、多くの合格者を生み出しています。
今回は、ソフトバンクでG検定・E資格を取得したお二人に、学習の動機や方法、今後の展望について伺いました。

プロフィール

G検定 2020 #3合格
野口のぐち  智明ともあき
ソフトバンク株式会社 カスタマーケア&オペレーション本部 ロジスティクス統括部 ロジスティクス企画部 企画課 課長

G検定 2019 #1、E資格 2024 #2合格
茶谷ちゃたに  こう
ソフトバンク株式会社 次世代戦略本部 第一戦略企画統括部 第2部 企画2課 課長代行

文系にもAI知識は必須の時代に

――現在の部署と業務内容について教えてください。

野口:ロジスティクス統括部で、iPhoneなどの製品をお客様や店舗に届ける社内物流を担当しています。コスト削減策の企画や、AIを活用した新しい取り組みを検討しています。元々文系で、IT知識は入社後に独学で身につけてきましたが、専門的にシステムやAIに精通しているわけではありません。

茶谷:事業開発の部門に属しており、これまでは特にスマートビルやスマートシティといった不動産領域の新規事業に取り組んでまいりました。私も文系出身で、以前は代理店営業をしていました。

――資格取得のきっかけは何だったのでしょうか?

野口:業務でシステムに関わる機会が増え、まずITパスポートを取得しました。AIが身近になってきたと感じ、ITパスポートのAI版のような資格を探してG検定を知りました。AIの基礎知識を身につけたいと考えたのがきっかけです。学習を進めると、「畳み込み」や「誤差逆伝播法」といった専門用語も多く出てきましたが、イメージを膨らませながら理解を深めました。

茶谷:不動産領域でのDXに取り組む上で、常に最新技術を把握する必要性を感じていました。ChatGPTが登場し、AIとどう向き合うか考えた際、表面的な理解ではなく、生成AIが動く仕組みを根本から理解する必要があると感じました。漫然と学ぶのではなく、目標があった方が良いと考え、E資格に挑戦することにしました。コードや数式レベルでAIの仕組みを理解したかったのです。G検定は数年前に取得しており、テキスト学習で対応できましたが、E資格はプログラミング経験が浅かったこともあり、かなり苦労しました。

すき間時間や早朝を活用した学習法

早朝4時から7時の時間を学習にあてたと振り返る茶谷氏

――資格取得のために、どのような準備や学習をされましたか?

野口:まず会社提供のEラーニングを一通り終え、市販の問題集付きテキストでインプットを進めました。推薦図書の『人工知能は人間を超えるか』を読み、AIの歴史的背景も学びました。また、通勤中の電車内でYouTubeのG検定解説動画を繰り返し視聴し、知識の定着を図りました。学習時間は、初期は土日にEラーニングを集中して行い、後半は移動時間や帰宅後に少しずつ、1日1時間弱程度の学習を半年ほど続けました。

茶谷:E資格ではPythonでのコーディングが必須でした。プログラミング経験はほとんどなく、Pythonに触れるのは初めてでした。課題のコードを書いて提出し、合格を得ないと次に進めないため、想像以上に大変でしたね。学習時間は、半年間、毎日早朝の4時から7時の2~3時間を活用しました。夜は連絡が入ることが多いですが、早朝なら誰にも邪魔されずに集中できます。業務も多忙だったので、ハードな半年間でした。

AI学習を支えたツールと乗り越えた壁

YouTubeを活用して理解を深めたと語る野口氏

――ご自身の学習方法で、特に効果的だった点は何ですか?

茶谷:地道に時間をかけたことですね。知識を整理するためにノートを作り、自分なりにまとめて理解を深めました。

野口:二つあります。一つは、用語と意味をスプレッドシートにまとめてひたすら暗記したことです。もう一つは、YouTubeの活用です。分かりやすい解説動画を探し、視覚的に理解することで、文字だけでは分かりにくい概念も腑に落ちました。

――学習中に苦労した点はありましたか?

野口:G検定の歴史や時事問題は文系でも理解しやすいのですが、計算問題や理系的な概念はテキストだけではすぐに理解できませんでした。様々な情報源にあたり、自分が納得できるまで調べるのに苦労しました。ただ、最近は解説動画が増え、当時より学習しやすい環境になっているかもしれません。

茶谷:やはりPythonコーディングの理解です。未経験から追いつく必要があり、最も苦労しました。特に強化学習は、理論を完全に理解しないとコードが書けず、丸暗記ではなく本質的に理解するハードルが高かったです。その理解を助けてくれたのがChatGPTです。エラーが出た際に、どう修正すればよいかChatGPTに聞きながら進めました。ChatGPTがなければ、途中で挫折していたかもしれません。

事業への活用と自身の市場価値向上を見据えて

資格取得を通じて、さらに知識を深めたい意欲が湧いたと語る茶谷氏

――資格取得によって、ご自身の視野に変化はありましたか?

野口:AIに関する最低限の知識が身についたという点で、G検定は非常によくできた試験だと感じています。実務面では、システム関連の提案を受ける際、以前GAN(敵対的生成ネットワーク)という技術の説明を聞いた時に「G検定で学んだ言葉だ」とすぐに理解できました。AIソリューションの提案も増えましたが、学んだ知識があることで、その内容を冷静に判断できるようになりました。

茶谷:様々なAI技術が登場する中で、それらの流れやつながりを理解できるようになったことで、トレンドに対する解像度が格段に上がりました。例えば、新しいAI技術の解説記事や論文を読む際にも、専門用語への抵抗感がなくなり、興味を持って知識を深めたいと思えるようになりました。

――学んだ知識を今後どのように活かしていきたいですか?

茶谷:元々の動機が不動産領域でのDX推進における技術のキャッチアップだったので、学んだ知識を現在の事業に活かしたいです。例えば、生成AIを活用してオフィスビルの価値をどう高められるか、具体的なアプリケーションやソリューションとして形にしていきたいと考えています。

――不動産業界におけるAI活用の現状はいかがでしょうか?

茶谷:築古ビルの増加や管理人材不足といった課題が多く、既存の業界プレーヤーや我々のようなITを得意とする企業が解決策を模索しています。不動産業界全体で見ると、AIに精通した人材はまだ少ないと感じます。そのため、ソフトバンクがAIに強みを持つことは、他社との差別化につながる可能性があります。

――その中で、茶谷さんご自身もAIに強い担当者として差別化を図れるわけですね。

茶谷:そうありたいと考えています。社内の生成AI活用コンテストにも応募し、上位に入ることができました。

野口:生成AIの勢いは目覚ましいものがあります。課長として、部下にもAI活用の重要性を伝え、実践を促していきたいです。最近では検索方法も変化しており、「ググる」だけでなく「パプる(Perplexity AIを使う)」といった言葉も出てきています。こうした新しい動きも率先して取り入れていきたいです。また、物流部門では、倉庫内作業など人手が必要な場面が多く、生成AIの活用が難しい面もありました。しかし、「フィジカルAI」のように、倉庫業務で活用できそうな新しいAI領域も登場しています。こうした技術動向を捉え、他社に先駆けてAIを使いこなす物流部門を目指すことが、今後の目標です。

――物流業界におけるAI活用の現状はいかがでしょうか?

野口:最適な配送ルート検索など親和性の高い領域では活用が進んでいますが、倉庫内での物理的な作業におけるAI活用はまだこれから、という印象です。

――その領域を野口さんが開拓することで、倉庫業務の変革につながるかもしれませんね。

野口:はい、そこは自身の課題と捉え、積極的に取り組んでいきたいです。それが他社との差別化にもつながると考えています。

学習継続を後押しした「危機感」

「危機感」が学習のモチベーションになったと話す野口氏

――資格取得を目指す方の中には、学習が続かないという悩みを持つ人もいます。学習を継続する上でのポイントや想いがあれば教えてください。

茶谷:私の場合は「危機感」です。AIと向き合わなければ、この先、仕事を楽しく続けられないのではないか、という強い危機感がありました。これだけ生成AIが普及する中で、何も知らないまま何十年も働き続けることはできないだろうと。そう考えると、勉強せざるを得ませんでした。今やらなければ後悔するという思いが、学習の支えになりました。

野口:私も危機感という点では同じです。当初はAIを自分とは関係のないものと捉えていましたが、実際に使ってみるとその可能性の大きさに気づきました。AIには仕事を奪われるといったネガティブな側面も注目されがちですが、活用すれば業務効率は格段に向上します。今後、AIを使いこなす人とそうでない人の間には、生産性に大きな差が生まれるだろうと強く感じています。この差がさらに広がっていくことへの危機感が、学習を始めるきっかけとなり、継続のモチベーションにもなっています。また、AIの利用においては、開発者だけでなく利用者側にも倫理観や正しい知識が求められます。G検定取得後に「Generative AI Test」も受験しましたが、生成AIの基礎知識を身につける上で、G検定と合わせて文系の方にもおすすめです。

――お二人とも文系出身ですが、とくに文系の方に向けてG検定などの取得についてアドバイスをお願いします。

茶谷:資格学習を通じてAIの本質を理解することは、どの業界にいても役立ちます。表面的な知識だけでなく、AIがどのようなものかを深く知ることは非常に有意義です。大変な面もありますが、G検定やE資格の取得をおすすめします。

野口:G検定を持っていることは、AIに関する最低限の知識を学んだ証になります。商談や打ち合わせの場でも、相手の理解度が変わってくる場面があると感じています。部下にもG検定取得を勧めており、実際に取得したメンバーもいます。今後もAI学習の重要性を伝えていきたいです。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

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