
G検定・E資格保有者の千代田化工建設 藤田 祐子氏(左)、板倉 正昂氏(中)、松澤 樹氏(右)
千代田化工建設株式会社は、1948年に設立された総合エンジニアリング企業であり、主に石油・ガス、化学、医薬品などの分野でプラントの設計、調達、建設(EPC)などの事業を手掛けています。とくに、大型LNG(液化天然ガス)プラントの設計・建設において高い実績と技術力を持っており、LNGプラント建設では国内トップシェア、世界でも4割のシェアを占めるリーディングコントラクターとして知られています。
近年、千代田化工建設はデジタル・AI人材の育成にも注力しており、早くから社員のJDLA(日本ディープラーニング協会)のG検定、E資格などへの資格取得を推奨いただいています。
今回は、G検定・E資格を取得した3名の方に、学習方法や取得についてお話を聞きまました。
プロフィール

G検定 2023#3合格 / E資格 2025#1合格
板倉 正昂 氏
千代田化工建設株式会社 地球環境プロジェクト事業本部 O&M-Xソリューション事業部 plantOS企画開発セクション データサイエンティスト、生成AIエンジニア

G検定 2023#4合格 / E資格 2025#1合格
松澤 樹 氏
千代田化工建設株式会社 地球環境プロジェクト事業本部 O&M-Xソリューション事業部 plantOS企画開発セクション データサイエンティスト

G検定 2021#2合格 / E資格 2022#1合格
藤田 祐子 氏
千代田化工建設株式会社 石油・化学・新エネルギープロセス設計部
AI業務未経験でも会社のサポートや社内コミュニティに支えられて合格
――現在の部署、職種、業務内容、そして取得された資格を教えてください。
板倉氏:plantOS企画開発セクションに所属しています。現在の主な業務は、社内の生成AI活用促進です。また、時系列データを用いた解析や予測などのデータサイエンス業務も行っています。G検定とE資格を取得し、Generative AI Testも過去3回開催されたうちの2回目と3回目を受講し、取得しています。
松澤氏:私は入社3年目で、板倉と同じ部署でデータサイエンティストとして働いています。プラントデータを使ったAI開発や、社内用にツール設計・開発を行っています。私もG検定とE資格を取得しています。大学ではコーディングによる開発経験はほとんどありませんでした。入社してからPythonを学ぶところから始まった感じです。
藤田氏:石油・化学・新エネルギープロセス設計部でプロセスエンジニアをしています。業務内容はプロセス設計で、石油化学プラントや、最近では水素、アンモニアなどの脱炭素案件を扱っています。G検定、E資格を取得しています。2021年から2022年にかけてDX関係の部署に1年限定で異動できる機会がありまして、自分の意思で手を挙げ異動しました。実はAIやDXに関しては、異動するまでほとんど業務経験はなく、特にPythonなど触った経験はありませんでした。
――まずG検定・E資格を受験された動機について伺えますか?

板倉氏:部署を異動した際に、社内でDX業務をする中で共通言語で話せるようにG検定を勉強する期間がありました。会社からも支援をいただけるということで受験し取得しました。次のE資格は事前に認定講座を修了する必要があり、それなりの金額が必要でしたが、そちらも会社が支援してくれ心強いサポートでした。
松澤氏:業務に関係があるという点もあり、取得しておいた方が良いというのはありました。特にE資格ですと講座の課題を通して手を動かしながら体系的に学べ、納得感を得ながら学びを深められる点が魅力的だと聞いて受けたいと思いました。あと板倉と同じく会社のサポートも大きかったです。
藤田氏:受験動機は先ほどお話ししたDX関連部署への異動です。DX関連部内での勉強会を開いていただきましたが、初めは全然ついていけませんでした。それからコミュニティができて、「まずはG検定を取ると理解しやすいよ」と聞き、一念発起して受けようと思いました。インターネットに資格の情報がたくさん溢れているのですが、どれを選べば良いか分からず、子育て中で時間も限られていました。そんな中、G検定やE資格の体系的なまとまりを見て、これなら効率的に知識を習得できると感じ、受験し取得できました。
――子育てと資格取得を両立されたのですね。
板倉氏:当時私も2歳の子どもがいたので、正直受けるか悩んでいましたが、子育てしながら合格した先人がいることを知り決意しました。先人たちの「こうしておけば良かった」「こうやったからできた」といった合格体験記を見ることでボリューム感や必要な時間が分かりました。社内のコミュニティでは過去の合格者たちが「この期間はここまで」「このタイミングだとここまで終わらせないと危ない」といった情報を提供してもらえました。効率よく受験準備ができ、合格できたのは、社内で先人達の実績が共有されている場があったからだと思います。
――皆さんは受験される前に、何か他のIT系の資格をお持ちでしたか?
板倉氏:部署異動前にデータサイエンススクールに自費で通っていた時期があり、そこでデータサイエンス系の資格を持っていました。そのスクール経験は資格取得にかなりプラスになりました。
松澤氏:私は全くありませんでした。全て入社してからです。
藤田氏:私も特に持っていませんでした。
学習方法は隙間時間やアナログの活用がポイント

――では、学習方法や時間について伺います。特に育児されながらの方は、勇気をもらえると思います。どのような学習方法を採りましたか?
藤田氏:朝や昼休み、子どもを寝かしつけた後など「隙間時間」を活用しました。「必ずこの時間にやる」と決めすぎず、起きられたらやる、できる時に少し早めに取り組むといった形でした。講座の受講は普段なかなか時間が取れないため、基本は2倍速で視聴し、理解が難しい部分はゆっくり見返すなどメリハリをつけていました。平日はコツコツ、休日は最低でも3、4時間、直前期には土日のどちらかを夫に子どもたちを見てもらって勉強していました。
松澤氏:私は平日は基本的に夜1時間から1時間半ぐらい時間を取るようにしていました。休みの日も増やすことはあまりせず、1時間半から2時間ぐらいでした。
板倉氏:学習方法はデジタルとアナログの二刀流でした。また少ない時間で効率よく学習するために、生成AIを学習に活用しました。例えばリッジ回帰の「リッジ」は山の尾根という意味で、なだらかになっていく様子が分かるなど、由来やストーリーが分かると頭に入りやすかったです。一方でアナログは、書くことで覚えることを重視しました。覚えられなかった問題や間違えた問題をふせんに書いて、分野ごとに壁に貼って可視化しました。自身の記憶のためでなく、どれだけ頑張っているかを妻に対しても可視化して、勉強時間の確保のための理解を得るようにするためでもありました(笑)。平日は子どもが寝た後の9時以降に、平均1時間ぐらいやっていました。直前期はそれでは間に合わないので、土日には妻に子どもを見てもらって近所の図書館に行き、5、6時間まとめて勉強していました。
――自分の中で、これは良かったという学習方法はありますか?
藤田氏:試験問題集や正式な講義以外に、「ゼロから作るdeep learning」の1巻と2巻を何度も読み返しました。コミュニティでも先人たちから推奨されていました。
松澤氏:特に工夫したことはありませんが、基本的な勉強としては講座にある予想問題、想定問題、模試をひたすら解いて、分からないところは自分で調べるという形で、その問題を完璧にしようと勉強していました。
板倉氏:生成AIやふせん活用以外ですと、最近の技術動向、特に生成AIやAttention、Transformerといったものが昨年の問題でも出たと思います。もちろん満遍なくというのも大事ですが、世の中の動向として今後どうなるかというところは、追加学習的に補強するようにしていました。
学習したことが実務に直結する資格

――資格取得まで一番苦労した点を教えていただけますか?
板倉氏:2点あります。まず「時間の確保」です。継続的にコンスタントな時間が必要なので、時間の確保・捻出が1点目です。2点目は「自分でコードを動かして理解する部分」です。ある程度時間をかけて自分が納得するまで腹落ちして、ようやく試験の応用問題にも活かせると思います。時間の確保と納得するという部分とは相反するようにも思えますが、この2点をバランス良くやることが大切だったと感じています。
松澤氏:重複するところもありますが、特にE資格は問題を解くだけではイメージしづらかったです。文章だけではなく、自分で手を動かして書いてみることで理解が深まったと思います。
藤田氏:経験がない中でやるということで、最初は楽しく講義を受けていましたが、いざ問題を解くと全くできないという状況に直面しました。その時は何度も繰り返し見たり、実際に手を動かしたり、ノートにまとめたりして頭に入れる作業が必要でした。
――皆さんはG検定もE資格も取られていますが、それぞれ何が一番良かったかを教えていただけますか?
板倉氏:G検定は幅広く分野が出題されるので、全体像を広く浅く捉えることができたのが良かったです。E資格はコードなど実際に動かせるものが出たので、学習したコードをそのまま実務に展開できたのが良かったです。
松澤氏:G検定はこれまでのトレンドや技術の流れ、歴史を知れました。E資格は、学生時代にあまり経験がなかったので、実際に手を動かして学ぶことでその後の業務に活かせました。データの処理方法など引き出しとして持てるようになり、実務に直結したと思います。
藤田氏:G検定は比較的気軽に受けられ、自分のAIへの適性や興味を確認するのに良い機会です。E資格で良かったことは、プロセス設計に戻ってからデータサイエンティストと話をする際に、必要なプロセスデータを求められる際、「なぜ必要なのか」「このデータは何に使うからこういう形で渡した方が良いか」という点が分かるようになったことです。仕事をする上で非常にスムーズになりました。プロセスとデジタルをつなぐ点で実務に非常に役立っていると感じます。
単純な興味からでもAIの学習は始めた方が良い

――AIに対する必要性をまだ強く感じていない方々に向けて、AIがなぜ必要なのか、興味を持ってもらえるポイントがあれば教えていただけますか?
藤田氏:AIは既に私たちの生活に深く関わっており、DX業務に関わっていない方も正しく理解し、活用することが求められています。一方で、「難しそう」「自分には無理」と感じている人も多いのが現状です。私自身、AIやDXの経験が無く、かつ子育て等で時間に制約がある中でも学べたことで興味を持ってもらえるかと思います。特にDXを推進する立場の方には体系的に学ぶことが非常に重要です。AIは魔法のように何でもできるわけではありませんが、正しく理解すれば、何ができて何ができないかを判断しやすくなります。
板倉氏:単純な興味からでも良いと思います。最初はChat GPTに身近な疑問を聞いたり、画像を生成してもらうなどから入ってみてはどうでしょうか。自分の趣味やスモールビジネスに活かしたいという人は、AIやデジタルを適切に使うことで自身のアイデアの実現可能性が2倍にも3倍にもなるはずです。
松澤氏:AIやプログラミング、データ分析は初めての人にはハードルが高いと思います。同期と話していても「業務でやってみたい」と言うけれど、なかなか腰を据えてやれていない人がいると感じます。気軽にできる環境、「市民開発」(IT技術を持たない一般社員が、ローコードやノーコードツールなどを利用し自らシステム開発を行うこと)のような形で様々な人が触れる環境があると、ハードルがなくなって興味を持つようになり、使うきっかけになるのではないでしょうか。
板倉氏:それはそうですね。日頃の身の回りの困り事をAIやデジタルの力で良くできないかというスモールの検証をやってみたという友人の話を聞きます。データサイエンスやAIの業務に関係ない人でも、身の回りの課題に使ってみて、それを周りの人に見せてみると「そういうこともできるんだ」と言われ、相談が来、経験を積む機会にもなり、良いサイクルができます。
――今後、学んだことをベースにこんなことに取り組みたいという抱負があれば教えてください。
藤田氏:弊社が取り組んでいるプラントにAIを導入する案件に引き続き、プロセスエンジニアとして協力できることがあれば進めていきたいです。現在アナログで実施している業務やお客様のデータ分析において、手法を簡略化できるツールを作りたいと思っています。
松澤氏:まずは今、資格勉強で学んだようなことを業務でしっかり活かせるぐらいにしたいです。まだインプットで終わっている気がするので、業務で発揮できるところに取り組みたいです。
板倉氏:共通言語で話せる人が多ければ多いほど良いと思っているので、G検定やE資格はもちろんですが、生成AIテストなども「受けてみない?」と声をかけてみたいです。
――こういった資格取得に取り組みたいと思っているけどなかなか取り組めない、続けられないという人に向けて何かアドバイスをいただけないでしょうか?
藤田氏:やはり会社のサポート体制が非常に大きいです。自分の背中を押してくれたと思います。コミュニティで皆と一緒に勉強したり、仲間がいて、分からない時に教えてくれる先輩がいたりするのも大きかったです。周りの支えに感謝しています。
松澤氏:私も同じような感じですが、社内のコミュニティで、メンターをつけてもらって、進捗を相談したり、勉強の仕方のアドバイスをもらえたのが、勉強を継続する上で良かったです。
板倉氏:新しい挑戦をしたい、あるいは今自分がどれだけ理解できているか客観的に認識するためのツールとして試験を使うという考え方です。その中で自分の苦手な観点も分かるので、それを資格取得に向けて補うことで、自身のステップアップにもなり、証明にもなるというのが個人的に考えているコツというかモチベーションです。