文化祭での経験から起業家志向に。 自らAIを学び、最前線の研究室を志す高校3年生

[G検定 合格者インタビューvol.6]ディープラーニング × 現役高校生

コロナ禍でプログラミングの学習を始め、文化祭でドローンをプログラミングで飛ばすというプロジェクトをきっかけに、AIやディープラーニングへの興味を持つようになったという金沢大学附属高等学校3年生の千代 航平(せんだい こうへい)さん。G検定の学習を通して具体的な進路も明確になってきたという千代さんは、どのような将来像を描いているのだろうか。

G検定合格者プロフィール

G検定2021#2合格

千代 航平さん

金沢大学付属高校3年生

文化祭でプログラミングによるドローンフライトショーを実施

――AIやディープラーニングに興味を持ったきっかけが、2年生の文化祭で行ったドローンフライトショーだったとのこと。

千代:コロナ禍で家にいる時間が増え「新しいことを始めよう」と思い、2年生の8月頃からプログラミングの学習を始めました。その後、10月の文化祭でドローンをプログラミングで飛ばすというプロジェクトを行いました。そのプロジェクトをきっかけに、AIやディープラーニング技術により興味が湧くようになりました。

ドローンプロジェクトは、小さいドローン20台を音楽を流しながら体育館で飛ばすというものです。そのプログラミングはほぼ独学で、Pythonを同時並行で学びながらやっていったのでとても大変でしたね。プロジェクトの資金約25万円をクラウドファンディングで集めたというのもいい経験になりました。

https://camp-fire.jp/projects/view/325017

――ドローンプロジェクトの反響はいかがでしたか?

千代:多くの生徒や先生方に見ていただくことができました。20台を一緒に飛ばすのは本当に大変でしたが、最後にはうまくいってとても嬉しかったです。

――その経験が、G検定を受験するきっかけにもなったのですね。 

千代:その後、AIに興味を持って調べたところ、G検定があることを知りました。もともと新しいテクノロジーに興味があったのですが、“ディープラーニング”という言葉はなんとなく聞いたことがある程度でした。「実際はどんなものなんだろう」ということを深く知りたいなと思い勉強を始めました。

2021年7月#2の試験に向け、本格的な勉強は6月頃から始めました。公式テキストは4月頃に買ってはいたのですが、知らない単語ばかりだったのでまず読むことから苦労しました。

――とはいえ、初めての受験で1発合格されています。学習のコツを教えてください。

千代:放課後に時間を取って、単語を調べたり参考書や問題集を解いたりしていました。勉強方法としては、わからない単語を全部エクセルに打ち続けて、それを1個1個インターネットで検索して意味を当てはめる、というのを繰り返していました。直前になるにつれて「これはやばいぞ」と焦りが出て勉強時間が長くなっていき、1度勉強を始めたらがっつり数時間はとるようにしていました。

――勉強のモチベーションはどのように維持していたのですか?

千代:調べていくと自分の知らない世界がそこにあったので、純粋にとても面白かったというのがあると思います。また、ディープラーニングの技術は数学や物理など他の知識にも支えられていることを知ったので、「大学でも学んでいきたい」という意欲にもつながりました。

――周りのご友人などの中でG検定を受ける人はほとんどいなかったとのこと。受験料も安くはないかと思いますが、それでも受験しようと思った一番の大きな動機はなんだったのでしょうか?

千代:学習が単純に面白かったことが一つです。あとは、プログラミングはやっていて楽しいのですが、なかなか目標が持ちづらかったので、学習の指標としてチャレンジしようかなと思いました。

AIに関するニュースを見る目が変わってきた

――G検定受験後の変化について教えてください。ディープラーニングやAIに対するイメージは、実際に勉強してみて変わりましたか?

千代:以前は、ざっくりとAIやディープラーニングみたいな言葉だけ知っているという状態でした。実際は、AIという定義がそもそも曖昧なもので、まだまだ発展途上のところが大きいということ。ディープラーニングは一つの手法に過ぎないというところを知れたのは大きかったと思います。

――勉強していて面白かった分野はありますか?

千代:ディープラーニングの仕組みで、特徴量の表現を自分で探しにいけるというのは、「もうそういうところまで来ているんだ」と思いました。それでもまだ、倫理的な問題や説明可能性の課題が残っているというところで、自分もそういうところを研究できたら面白いなと思いました。また、これからは自分の手でAIやディープラーニングのコードを書けるようになりたいなとも思っています。

――身近な方々の反応はいかがでしたか? 

千代:両親は、特段この分野に詳しかったりエンジニアだったりというわけではないのですが、例えば「これはAI活用した新しい事例です」というニュースがテレビで流れていたら、「これはどういう技術使っているんだろう」と頭の中で考えたことを親に喋っていると、興味を持って聞いてくれますね。

――千代さんご自身も勉強を通して、思考が整理されたり知識がついたりしたと思います。最近気になったニュースはありましたか?

千代:例えば、AI音声が人間っぽく自然な発音へと進化してきているというニュースでは、「最近の自然言語処理はまたさらに発展してきているんだな」と感じるようになりました。今までは言葉がわからないからスルーしていたニュースも、「これはあれのことを言っているんだな」と理解できるようになったのでさらに興味を持てるようになりました。

――AIへの理解が深まり、見方が変わってきた中で、今の日本社会におけるAIの現状について、どのように思われますか。

千代:AIと一言で言っても、エアコンについている温度調節機能から音声認識まで本当に幅広いのに、よくわからないまますべて“AI”と言っているのが難点だなと感じています。AIは、ビジネスなどを行っていく上で、1人の人間が行えるタスクをさらに増やしていけるものだと思っているので、少子高齢化が進んでいる日本においては絶対にAIの役割が重要になってくるのではないかと考えています。テクノロジーの進歩に伴ってAIの活用の幅も広がるのではないかと思っています。

目指すはAI最前線の研究室、研究や起業を通じた社会貢献を

――AIやディープラーニングを学ぶ前の自分と今の自分とで、最も大きな変化はどのようなことでしょうか。

千代:1年生の時点では、「自分はこれから何をしていきたいか」が全然明確ではありませんでした。プログラミングやG検定の学習を通して、AIやディープラーニングといった新しいテクノロジーを使ったことを学べたら面白いなと思い、工学部を志すようになりました。

――AI・ディープラーニングを学んだ先のビジョンとして、今はどんなことをしていきたいと考えられていますか?例えば技術進歩を求め、研究職志向なのか、新たな活用法などを考えていくようなビジネス志向なのか、など今のお考えがあれば教えてください。

千代:どちらかというと、活用する方が性に合っていて好きな方です。ドローンプロジェクトの際に学んだことが、技術が進むのももちろん大切ですが、それをうまく落とし込んで使っていくにも、お金や人を巻き込んでいく力が必要になってくるということ。そのようなことも含めて、大学でさらに学んでいけたらいいなと思っています。

――具体的に希望している進路はありますか?

千代:志望学部は、東京大学の工学部です。その理由の一つは、ディープラーニングの学習を通して知った松尾豊教授の存在です。私はスタートアップや起業することにも興味があるのですが、松尾教授の研究室からも研究をしながら起業することも積極的に行われていることを知ったので、ぜひそこで学びたいという思う気持ちが強くなりました。

――起業にも興味がおありなのですね。

千代:親が自営業をやっていて、経営や経済系の本が家に多くあったこともきっかけかもしれません。日本のスタートアップは世界に比べるとまだまだ少ない中で、私もそういうところに参画して何かできたらなと思っています。文化祭でクラウドファンディングをした経験も、起業を目指したいと思うようになった大きな一つの経験でした。

私がスタートアップに興味を持ったのは、世界を見まわすとまだまだシリコンバレーや深圳といったところが強くて、すごく悔しいなと思ったからなんです。日本の市場は世界で3番目に大きいはずなのに、まだまだユニコーン企業が出てこないから面白くないなと思っていて。そのような中で、日本で有数のユニコーンとされるPreferred Networksさんのように、最先端技術によって新しいイノベーションや雇用を生み出していくというようなことにも、ゆくゆくは関われたらと思っています。

――では将来は、研究もしながらスタートアップの起業を目指すということでしょうか?

千代:起業家であっても研究者であっても、「“人のためになる”ことをやりたい」というところは結局同じかなと思っています。最近は、大学発のベンチャーや、大学の研究を生かした起業も増えてきているので、自分も研究を深めながらそれをどう活用していくのかを考えていきたいです。

テクノロジーへの高い理解と経営視点を持ち合わせた人材に

―― “人のためになる”ことについて、具体的に「こういう研究やサービス開発を通して、人のためになりたい」と考えていることはありますか?

千代:学んだばかりなのでなんとも言えないというのが正直な感想なのですが(笑)、先ほどの説明可能性はとても大きな市場になるのではないかと思っています。自動運転などでAIを適用していくときに、「なぜそういう判断を下したのか」という説明が求められてくると思います。その分野の研究と活用方法についてフォーカスを当てたら面白いなと思っています。

――ちなみに、憧れの起業家などはいらっしゃいますか?

千代:起業家ではありませんが、1番触発された人はベンチャーキャピタリストの佐俣アンリさんです。『僕は君の「熱」に投資をしよう』(2020年、ダイヤモンド社)という本を読んで、スタートアップについて関心を持つようになりました。佐俣さんは、IT系だけでなく量子コンピュータの実用化といった研究開発型スタートアップなど、まだまだ実現していないこれからの技術に対して投資をしていることを本で知りました。同時に、そのような分野にチャレンジしている人がいることも知って、「自分もチャレンジしたい」と思うようになりましたね。2020年8月の発売直後にすぐ読んだので、ドローンプロジェクトを始めた原体験もここにあるのかもしれません。

――最後に、「こういう人材になっていきたい」という将来の夢を教えてください。

千代:私が東京大学の工学目指している理由の一つは、プログラミングや物理数学というところだけではなくて、それらを活用するための経営や経済など社会科学も共に理解したいと思っているからです。しっかりとテクノロジーの高い理解を持ちながら、経営者の視点からも考えられるような人になりたいなと思っています。

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